最近の防災デジタルに関する取り組みについて

特集:災害対策のDX 化の現在と未来

内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(防災デジタル・物資支援担当)
木原 栄治
2022年12月1日

 
 

 我が国で目指すべきデジタル社会の実現に向けて、政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策を記した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下、「重点計画」)が、令和3 年12 月に閣議決定され、令和4 年6 月に改訂された。重点計画のなかで、防災分野は、健康・医療・介護、教育などとともに、重点的に取り組むべき分野に位置づけられており、内閣府(防災担当)では、防災情報のデータ連携のためのプラットフォームの整備や、物資調達・輸送調整等支援システムの高度化、クラウド型被災者支援システムの開発などの取り組みを進めている。
 防災情報のデータ連携について、内閣府では、災害発生時に多様なデータを集約し提供するシステムとして「総合防災情報システム」を運用している。災害情報を地理空間情報として共有するシステムであり、災害対応機関が被災状況等を早期に把握し、被害の全体像を認識することを目的としている。令和5年度末に現行システムの耐用年数を迎えることから、現在、次期システムの整備にむけた検討を行っている。SIP 第1 期で研究開発が進められた「SIP4D」の機能を採用することなどにより、最新のGIS 関連技術等を用いた運用性・拡張性の向上、行政機関等と災害情報を相互に活用できる機能の付加、民間・研究機関を含めた収集情報の多様化などのほか、将来的な機能拡張にも柔軟に対応できるシステムとなるよう検討を進めている。
 そして具体的な応急活動を支援するシステムとしては、災害時の被災者への物資支援の円滑化のため「物資調達・輸送調整等支援システム」を令和2 年度から運用している。国と地方公共団体の間で、物資の調達・輸送等に必要な情報を共有し、調整を効率化することで、迅速かつ円滑な被災者への物資支援を実現するためのシステムである。都道府県及び市町村の物資拠点や避難所の物資情報(ニーズ、調達・輸送状況等)を国・都道府県・市町村で共有ができる機能を有している。また平時において、備蓄物資の登録や訓練等でも利用を図っており、より有効なシステムとなるよう継続的な改修も行っている。
 また市区町村における被災者支援業務の迅速化・効率化には、行政手続の電子化や被災者支援のためのシステム整備等が有効な手段の一つであるため「クラウド型被災者支援システム」を構築し、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が運用する予定となっている。クラウド型被災者支援システム導入の
効果として、住民基本台帳の情報をベースとして容易に被災者台帳の作成が可能となるほか、マイナンバーカードを活用して、罹災証明書や被災者生活再建支援金、災害弔慰金等のオンライン申請、自宅や遠隔地からの罹災証明書等の申請、全国のコンビニ等での受領が可能となる。また平時においては、個別避難計画の作成機能等も備えている。
 さらに、IoT 機器の防災での活用にむけた「防災IoT」の検討や、全国の指定避難所及び指定緊急避難場所に共通ID を付与する取り組みなど、関係省庁とも連携しながら、デジタルを活用した防災力向上の取り組みを行っている。

    

    

図 次期総合防災情報システムのイメージ