朝倉市の災害対策本部の運営

防災コラム

沼田宗純
2017年9月1日

 九州北部豪雨の災害対応をしている朝倉市に行った。7月10日に朝倉市災害対策本部に入ったときには、自衛隊、警察、国土交通省などが本部にいたが朝倉市の職員はほぼ不在だった。そのため、被害と対応の状況が一元的に把握できず、市職員と他機関の効果的な連携体制は構築されていなかった。そもそも市職員の役割分担が整理できていないため、どこで、誰が、何を行っているのかを本部で把握することも容易ではなかった。
 7月12日に再び朝倉市の災害対策本部に入り、市職員に対し災害対応プロセスを説明し、災害対応の全体像を把握してもらい災害対策本部の運営方法についても議論した。その結果、翌13日に災害対策本部が機能しやすいように、本部のレイアウトを変更し、それまでなかった災害対策本部の看板を設置し、マスコミの自由な出入りも制限し、役割分担表を作成し、電話・パソコン・プリンターなど機材を設置し、職員がベストを着用し、福岡県職員と市職員を隣同士に配置し、本部の動線を確保するなど、各種の改善を行った。その結果、現場の情報が本部に入り、災害救助法への対応ができるようになるなど、本部の運営が大幅に改善された。
 過去の災害対応における災害対策本部の運営については、これまで多くの課題や教訓が得られているものの、それを伝承するための仕組みが存在していない。そもそも災害対策本部の運営訓練に関する各種の研修プログラムが存在するが、実践的な訓練を提供するものは少ない。過去の災害対応の教訓を伝承するためには、実践的な災害対策本部の運営訓練の提供に加えて、行政職員が訓練を受講しやすい環境構築が求められる。