浪江町役場全職員対象のヒアリング調査

シリーズ「東日本大震災」

関谷直也

2015年3月1日

 2011年3月11日に発生した東日本大震災について様々な調査・研究が行われているが、全体としては、津波被災地における研究が多く、東京電力福島第一原子力発電所事故についての研究はあまり行われていない。また役場職員を対象とした調査も、その実施のむずかしさから、人と防災未来センターが宮城県庁、南三陸町役場にて行っている程度で、あまり実施されていないのが実態である。
 CIDIRでは、2014年11月25日~28日にかけて、浪江町役場職員へのヒアリングを行った。CIDIRからは、田中淳センター長、定池祐季特任助教と小林秀行、関谷直也が、またほかにも作間敦氏(環境防災総合政策研究機構)、安本真也氏(早稲田大学大学院)、湯浅拓氏(早稲田大学大学院)、斉藤さやか氏(明治大学大学院)ほか4名の協力を経て、合計、108名からヒアリングを行った。
 浪江町は、発電所立地町でないにも関わらず、町の主要部がほぼ東京電力福島第一原子力発電所から20㎞圏内の警戒区域に位置し、福島原発近傍の自治体の中でも人口19000人ともっとも大きい。3月11日直後は、全町民を広域避難させる必要があったにも関わらず、政府・県などから情報が入らず、避難手段としてのバスの手配などもなく、避難に相当な困難を強いられた。事故直後の対応についてヒアリングをしてみると、驚くほど、「放射線量」など原子力災害ならではの話は出てこない。むしろ、避難所対応、組織運営、情報共有など様々な災害における広域避難に関する災害対応として将来的に共有されなければならない教訓が多く残されているのである。
 浪江町は現在、帰町を目指してそのためのインフラ整備、防災体制の構築を行っている。CIDIRは浪江町と、避難対応にかかる調査及び今後の防災体制構築のための連携・協力にかかる協定を締結することになっており、このヒアリングは地域防災計画、広域避難計画の策定に活かされることになっている。
 二度と繰り返してはならない悲劇の教訓として、当時の状況を学術的に記録し、浪江町の防災に活かすとともに、今後の原子力防災、広域避難として全国の自治体、後世に伝えていくことができるように努力していきたい。