福島第一原子力発電所事故からの環境回復と復興

特集:東日本大震災から10年-防災対策は何が変わったか?

関谷直也
2021年3月1日

 東日本大震災は、過去に例のない地震、津波、原子力の3つの複合災害という特徴を指してTriple Disasterと呼ばれる。実相としては「複合」「広域」「長期」という特徴がある。「複合」自体はもともと「蓋然性は極めて低い」とされていた。複合災害の結果として事故進展のため、津波で流された方々の救助に行けないまま避難せざるを得なかった。そして「広域」に、津波、広域避難、区域外避難、屋内退避、経済被害。心理的被害、燃料不足、交通障害(帰宅困難者)、電力障害(計画停電)など多様な被災を生んだ。
 「長期」に原子力災害が続いたことは様々な復興における課題を生み出した。就業、進学、医療へのアクセスを要因とした時間の経過に伴う人口回復の困難、帰還の時間差に伴う地域差・意識差、みなし仮設・借上住宅提供の終了、損害賠償の時効など時間を経るごとに課題が生まれてきた。人への風評被害、差別も問題となってきた。一方、物理的には放射線量が低減してきていることも事実である。放射線量はチェルノブイリと比較して、半減期の短いセシウム134の割合が高かったこともあり、急激に低減してきた。徐々に避難指示区域も解除され、帰還も少しずつ進んできた。
 2020年には検査体制も見直された。検査はモニタリング検査、米は全量全袋検査、牛の全頭検査などを行ってきて安全性を確保してきたが、農地除染、剥ぎ取り、ゼオライト、カリウム施肥などの結果、野生の動植物以外の、野菜・果物、米や畜産物からは、検出限界値以上の放射性物質は検出されなくなってきたからである。調査結果では、検査体制も認知され、年々、福島県食材への抵抗感は減ってきている。だが一方で、流通ルートは回復せず、風評被害がいまだ残っている。他産地と比べ市場順位には大きな差がついてしまっている。かつ新型コロナウイルス感染症により、外食産業は低迷し、市場順位が低い福島県産の米、牛などの農産物の出荷が大きな影響を受けている。
 2021年度で、除染土の中間貯蔵施設への搬入はおおむね完了すると言われているが、30年後の県外移設、再生利用のまだ議論はこれからという段階である。
 2022年度で、敷地内のタンクが満杯になるとされているALPS処理水も、処分方法、タイミング、期間、総量濃度など、どう処分するかはいまだ議論があり、これらを政府は決定できていない。
 また今後の議論、廃炉・エンドステートに関する議論、10年を踏まえた記録・検証、情報発信なども、課題として残っている。コロナ禍で東日本大震災への関心がない中、東日本大震災への関心を失ってきた層にどう情報発信していくのか、後世に、海外にどう伝承していくのか、情報発信は、現在の最大の復興課題の一つである。
 我々は10年間で、この事故とその後の原子力災害から何を学んだのだろうか。緊急時の危機管理、リスク・コミュニケーション、社会混乱、復興における合意形成など、この事故と災害の提起した課題を学びきれず、克服しないまま現在に至っているのではないか。コロナだけではなく、原子力緊急事態宣言も解除されておらず、復興もまだ道半ばである。10年を期に次の世代に何を残すべきなのか、今一度、改めて考えなければならない。