防災コラム:レジリエンスマネジメント人材育成の新たな教育モデル〜東京大学履修証明プログラム 災害対策エグゼクティブプログラム(DSEP)の実践と意義〜
准教授
沼田宗純
2025年9月1日
情報学環は2024 年4 月、CIDIR と生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC)の協力のもと、DSEP「Disaster Solution Executive Program(災害対策エグゼクティブプログラム)」を開講した。DSEP は、学校教育法に基づき修了者に履修証明書が発行される文科省認定の制度を活用したものであり、本学として医学部以外では初の履修証明プログラムである。
経営者や高度専門職が災害時や不確定な未来に必要とされる意思決定力(レジリエンス能力)を学ぶ国内初の取り組みとして注目を集め、現在は第2 期(2025 年4 月~)を迎えている。
近年、世界は自然災害に加え、感染症やサイバー攻撃、地政学的リスクなど複合的な脅威に直面している。最終的に組織や地域を守るのはリーダーの判断であると考え、DSEP は「危機に強いリーダー」の育成を主軸としつつ、法人・個人による自助・共助への投資を促すことを目的に設計された。カリキュラムは、災害対策の8分野の体系を中心として、自然科学と社会科学を基盤に、サイバー犯罪、法医学、組織危機管理など多岐にわたり、国内外の災害事例を用いたケーススタディを組み合わせている。理論と実務を往復しながら「自分の現場にどう適用できるか」を議論することで、受講者は実効性ある知識と同時に強固な人的ネットワークを獲得する。
第1 期は上場企業4 社を含む経営者17 名を中心に計28 名が参加し、女性比率は約18%であった。第2 期は医師や弁護士、政治家なども加わり、経営人材16 名とともに計30 名が受講している。女性比率は約25%へと上昇し、外国人も参加するなど国際性と多様性が拡大した。1 期・2 期の受講生は連動し、異なる背景を持ちながら平時から協働できるネットワークを形成している。
全国の大学でも履修証明プログラムは導入されてきたが、多くは少人数にとどまるか、1 期限りで終了しているものもある。その中でDSEP は継続開講し、参加者層の多様性を拡大させている点で全国的にも稀有な成功例とされ、学内外からの注目度も高まっている。既に他研究科や他大学から問い合わせが寄せられ、制度活用の先行モデルとしても期待されている。
今後は「大学院レジリエンスマネジメント研究コース設立」や「災害対策士などの関連資格との連動」を視野に発展を目指す。DSEP は災害多発時代に不可欠なリーダーを育成し、東京大学が社会に知を還元し続ける挑戦の場として進化を続ける。
