ローカライズされた情報の伝達をー「南海トラフ地震臨時情報」テレビ第一報分析

特集:南海トラフ地震臨時情報発表1年


毎日放送報道情報局報道センター 気象・災害デスク/人と防災未来センター 特別研究調査員
福本晋悟
2025年9月1日

 
 2024 年8 月8 日「南海トラフ地震臨時情報」が初めて発表された時、放送は何を伝えていたのか―。それを明らかにするため、近畿地方を放送エリアとする在阪局のうち日向灘地震発生直後から特番を開始していた4局(NHK、MBS、KTV、YTV)を対象に、「臨時情報(調査中)」から「評価検討会」開催までの約30 分間の放送内容を分析した。なお、このうちローカル特番を放送したのはYTV の約15 分間のみで、他は在京キー局の番組を放送していた(つまり、MBS 特番はJNN 特番と同じ)。
画面構成―何を映していたのか―
 では、どのような映像が主として画面に映し出されていたのか(図–1)。NHK とKTV の最多は、津波注意報対象地域をライブで映した「情報カメラ映像」だ。MBS とYTV では「スタジオ展開」が最多で、記者出演の解説などが行われた。「地震発生時映像」は、宮崎県内を中心に使用された。「解説VTR」は「臨時情報」や南海トラフ地震を解説する内容であり、MBS とKTV が放送した。
 地震発生時は、情報カメラのライブ映像や震度情報などをまとめたCGなどを中心に画面を構成することが定石だ。今回、日向灘地震の特番から始まった臨時情報の初動特番は、地震特番の手法が色濃く表れていた。
アナウンスメント内容―何を言葉にしていたのか―
 次に、出演キャスターによるアナウンスメント内容である(図–2)。「臨時情報・南海トラフ地震」に関する内容が最も多いのはMBS とYTV で、MBS は他局より突出して多い。NHK は各地の震度情報や今後の揺れへの警戒などの「地震」が、KTV は「津波」が最多となった。
 そもそも「臨時情報」は、「防災対策推進地域」の住民でも28.7% にしか知られていなかった(内閣府2023)。多くの人にとって初耳となる「臨時情報」の解説量は、十分だっただろうか。そのような状況下で、現在の海の様子を映して「臨時情報」を解説されても、視聴者に内容を理解されづらかったのではないか。
ローカライズされた「臨時情報」の情報を
 今回のようにMj 6.8 以上の地震発生による「臨時情報」では、震度の大きい地域とそれ以外の地域で、情報のニーズが異なるのではないかと考えている。ある程度以上の震度や津波注警報の対象となった地域の住民がまずもって入手したいのは、地震や津波の最新情報である。一方で、それ以外の地域の視聴者にとっては、「臨時情報」関連が優先されるだろう。
今回、在阪局で唯一ローカル特番を放送したYTV は、東海道新幹線の運行状況を伝えていた。このように、その地域のニーズに合うローカライズされた番組内容を計画・事前準備しておく必要があるのではないだろうか。
 新設された防災情報は、いつか必ず初めて発表される―。「北海道・三陸沖後発地震注意情報」も同様だ。「まだ1 度も出たことがないので……」と事前準備へのエクスキューズをせず、“いつか”に備えているだろうか。防災情報の利活用や研究をする私たちが取り組むべき本当の課題だと感じている。

図ー1 各局の画面構成
図−2 各局のアナウンスメント内容