神戸市における災害対応のDX化

特集:災害対策のDX化の現在と未来

 神戸市危機管理室
谷 敏行
2022年12月1日

 
 

 神戸市危機管理室では、令和元年度から災害発生時の情報を一元的に集約・把握するために『危機管理システム』を導入し、災害対策本部のデジタル化を図っているほか、AI やICT 技術を活用した災害対応などについても、事業者や関係機関と連携しながら取り組んでいる。
 その取り組みの一環として、令和3年度に、全国に先駆けて業務継続計画と災害受援計画を統合した「災害時業務継続・受援計画」を策定し、効果的に計画を運用するため「災害対応工程管理システム」を導入した。
【危機管理システムの特徴】
①情報共有機能
 これまで、紙やホワイトボードに列記していた気象情報、被害情報、避難情報などの災害情報をシステム内に集約することにより、システム上で各部局間が迅速に情報共有を図ることが可能となった。
②判断支援機能
 集約した気象情報、被害情報やハザードマップ等を地図上に重ねて表示することにより、現在の状況を正確に把握し、災害対応方針や避難情報発表の判断材料としている。
③一括情報発信機能
 避難情報など災害情報の発信について、緊急速報メールやひょうご防災ネット、Yahoo! 防災などに一
斉配信する仕組みを活用し、市民への迅速な情報発信に努めている。
【AI による情報解析ツールの活用】
①スペクティーの活用
 Twitter などSNS 上に投稿された災害に関する情報をAI が集約・判別して通知するシステム「スペクティー」を活用し、迅速な災害情報の収集に努めている。
②防災チャットボットを活用した災害情報共有システム
 LINE 上の防災チャットボットを活用した災害情報共有システムの実証実験を防災科学技術研究所やLINE、ウェザーニューズなどが参画する「AI 防災協議会」と継続実施しており、約1 万人の登録者に対し、大雨警報発表時や台風接近時などに投稿を呼びかけることにより、迅速な情報収集に役立てている。
【災害対応工程管理システムの活用】
①災害対応のプラットフォームシステム
 災害対応に関する各種計画やマニュアルは、地震や風水害等、様々な災害種別ごとに作成されており、あらゆる災害に対して網羅的に備えるほど、実災害時には必要となる資料の検索が困難となる課題があった。
 神戸市では「災害対応工程管理システム」を活用し、各種計画やマニュアルのプラットフォーム化を図ることで、災害の発生要因にとらわれない資料の活用を実現している。
②災害対応業務の関連性を可視化
 これまで、部署ごとに災害対応に関する計画やマニュアルを策定していたが、それぞれの業務の関連性が把握しづらいといった課題があった。
 神戸市では、東京大学生産技術研究所の沼田研究室との連携により、神戸市既存計画を「47 分類の災害対応業務」に整理し、災害対応工程管理システムを活用して災害対応業務の関連性の把握と可視化することで、業務の関連性や進捗状況の把握が可能となった。
 神戸市では、研修や訓練でこれらのシステムを活用しながら継続的な検証を行い、業務継続マネジメントを推進するとともに、災害対応のDX を推進し、迅速な災害情報の収集・共有や効果的な災害対応方法のさらなる検討を進めている。