3% の重み

防災コラム

飯高隆
2022年9月1日

 

 それは授業の時であった。日本の内陸地震についての説明をしていた。ご存知のように地震調査研究推進本部では、日本の主要活断層について調査を行い、今後の発生確率について公表している。「皆さんの住んでいる地域には断層があって、その断層帯は、今後30 年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中ではやや高いグループに属することになっています」。この一言に、学生たちは幾分緊張したようであった。「その確率は0.1 ~ 3%未満」。学生たちも安心したようであった。日常生活の中での3% 以下の情報にどう対処すればいいのか。普通であれば、それはほぼ起こらないこととして、頭から離れてしまうような数値であるといえる。そこで続けた。「ちょっと考えて欲しい。皆さんが卒業して、政府や地方自治体の防災担当となった時に、今後30 年で活断層の活動の可能性が3% あるといわれたとき、どのような対策や行動がとれるだろうか?」「2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震の前に、東北地方の自治体あるいは政府の防災担当者だったとして、1000 年に一度起こるかもしれない貞観地震の存在を知らされたとしたら、どんなことができただろうか」。学生たちの戸惑いが感じられた。災害はひとたび起こってしまうと取り返しがつかない。発生確率3% の情報を前にどのような対応をとればいいのか、どうするべきなのか。常日頃から考えておくべきことなのだと思う。今は残念ながらコロナ禍でオンライン授業などで対面での十分な討議のできる状況ではない。いつの日か対面でゆっくりと若い学生たちと議論を交わしたいと考えている。