高齢者施設のBCP策定義務化に対する取り組み

防災コラム

沼田宗純
2021年12月1日

 令和3 年度から指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準を定める条例において、業務継続計画を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない(第二十九条の二)とされ、業務継続計画の周知、必要な研修及び訓練を定期的に実施することが義務化されている。
 高齢者施設では、自然災害に対して入所者と職員の安全を確保し、業務継続することが重要であるが、実効性のある業務継続計画を策定することは容易ではない。
 そこで本研究では、実効性のある業務継続計画の策定を目的として、災害対応工程管理システムBOSS(Business Operation Support System)を活用して災害対応の全体の業務フローを構築し、実証実験により、その有効性を検証した。
 対象は、令和元年の台風において甚大な被害を受けた「ときわ園(千葉県千葉市)」である。BOSS を活用し、ときわ園で求められる災害対応の全体業務フローを構築した(図–1)。
 そして2021 年10 月29 日にときわ園において停電時の対応の実証実験をした。倉庫、厨房前、本館地下の3 箇所で実施した。倉庫に発電機と投光器を置き、ここから厨房前と本館地下に機材を移動し、発電し投光することを行った(図–2)。
 その結果、BOSS を活用して役割分担を明確にしながら対応したことで、効果的な対応ができることが分かった。今後の課題としては、各業務の留意事項、写真や動画を使った説明資料の充実が必要であることも分かった。

図‒1 BOSS における停電対応の中工程
図‒2 実証実験の活動拠点