被災市町村における応援受援について
特集:CIDIR Report
宇田川真之
2019年6月1日
今日では、大規模災害による被害の甚大な自治体による災害対応は、他団体の応援を受けながら行われることが一般的な形態となってきた。地方自治体における発災害時の対応能力の向上は、地域防災計画等による基本的な対応能力を整えるとともに、円滑・的確に応援受援が行われるように備えることの重要性も益々高くなってきているといえる.そのため、地方自治体が被災し応援を受ける立場となった場合、および、応援を行う側となった場合の両側面で、関連する制度が整えられつつある。
応援側の全国的な仕組みとしては、総務省によって「被災市区町村応援職員確保システム」が2017年度末に構築された。当該システムが適用された場合には、被災都道府県には「被災市区町村応援職員確保現地調整会議」(構成:総務省(事務局)、全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会、被災地域ブロック知事会幹事都道府県、被災都道府県等)が設置され、国には「被災市区町村応援職員確保調整本部」が設置される。そして、被災市区町村ごとに、原則としては一対一で支援を行う「対口支援団体」(カウンターパート支援)の調整が行われる。このシステムで主に想定されている支援内容は、避難所の運営や、家屋の被害認定調査、罹災証明書の交付など多人数の一般事務職を要する業務である。また,被災市区町村長の災害マネジメントの総括的な支援も行うための「災害マネジメント総括支援員」の派遣も想定されている。このほか、保健師や土木の技術職などの人的派遣については、各所管省庁による調整も行われる。
こうした仕組みは、昨年の西日本豪雨、北海道胆振地震で実際に稼働し、その後に改善も図られている。今年度からは、災害マネジメント総括支援員とともにその補佐要員などからなるチームとして早期から派遣され、被災市区町村における応援職員のニーズ等の把握を行うことも想定されるようになった。派遣される候補者は事前に選定され、研修等による人材育成も充実される見通しである。
一方で市町村が被災をした際に、外部応援を円滑に受けられるような施策も進められている。内閣府によって「地方公共団体のための災害時受援体制に関するガイドライン」が2016年度末に策定され、被災市町村では災害対策本部内に全庁的に受援活動を調整する担当を設けること、避難所運営など応援を受け入れる主要業務には受援担当者を配置することなどが求められた。現在、都道府県や市町村で、平時から受援計画の作成が進められている。
こうした受援活動は、行政職員の受け入れのみならず、救援物資や燃料などの物資や資源などの受け入れも対象となり、関係機関は民間事業者を含めて多岐に渡る。これら多様な官民の関係機関による応援受援活動が円滑に行われるように、各応急対策の基本的な業務オペレーションの全国的な共通化も取り組まれている。例えば,救援物資業務については、昨2018年度末に国土交通省より「支援物資のラストマイル輸送に関するハンドブック」が策定された。そのなかでは、都道府県および市町村における標準的な,救援物資業務の実施体制、民間事業者・団体等と連携した業務フロー、情報交換様式などが整理されている。多くの地域で、それぞれ平時よりこうした標準的なオペレーションにもとづく訓練を行っていれば、災害時における他地域での応援受援活動もより円滑になると期待される。
なお,基本的な業務オペレーションの標準化とともに,被災地の多様な社会課題に対応するため,多種多様なセクターによる創発的な支援活動の重要性への認識も高まっている。この5月下旬には,全国災害ボランティア支援団体ネットワーク主催の「災害時の連携を考える全国フォーラム」が開催され,被災地の障害者や外国人への支援など様々な課題への取り組みをテーマに,各セクターの専門性を活かした創発的な活動や、連携・協働の促進に向けた話し合いが行われている。
対口支援団体の活動状況(平成30年7月豪雨における被災市町村への応援職員の派遣について[総務省]より)