東京大学・福島大学 原子力災害復興連携フォーラムを開催
CIDIR Report
関谷直也
2018年3月1日
CIDIRでは、2016年より、東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所事故の研究を進めるため、福島大学小山良太教授、丹波史紀准教授(現立命館大学准教授)を客員教員として迎え、研究・教育面での協力を行っている。その一環として、去る12月5日、東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターは、福島大学農学系教育研究組織設置準備室との共催で、東京大学大学院情報学環福武ホール・福武ラーニングシアターにて第一回福島大学・東京大学原子力災害復興連携フォーラム「東京電力福島第一原子力発電所事故後の風評被害に関する懇談会」を開催した。
本フォーラムは震災から7年目を迎えるにあたり、震災から復興の途上にある福島県の抱える現状、農業、農産物流通の課題を在京のメディア、省庁などに再認識してもらうことを目的として実施された。まず、東日本大震災から6年が経過した福島県産の食品に関する検査体制・検査結果の概況・現状を確認した。そして消費者意識や流通の動向についての、福島大学・東京大学で実施した2013年より経年的に行っている共同調査、2017年に行った初の国際比較調査の報告を行った。
具体的には『風評被害の現状と実態調査報告』と題し、福島大学経済経営学類・農学系教育研究組織設置準備室の小山良太教授による司会のもと、福島県農林水産部水田畑作課主任主査丹治善仁氏より『福島県産食品の検査体制-米の全量全袋検査を中心として-』、高田大輔福島大学農学系教育研究組織設置準備室准教授より『福島県産の農産物の輸出における現状と課題』、関谷直也福島大学うつくしまふくしま未来支援センター客員准教授(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター特任准教授)より『国内と諸外国における風評被害の実態-2017 年度調査および国際比較調査より』についての報告が行われた。
その後の参加者と発表者の意見交換では、特に、米を中心とする現況の検査体制、国内の不安感および関心の低下、国際比較調査から明らかになった海外の根強い不安感などを中心として意見交換が行われ、福島県の復興の現状についてアップデートしていく必要性が論じられた。メディア関係者、復興庁や消費者庁ほか省庁関係者を中心に92名の参加者を得て、熱心な議論が行われた。第二回の開催を望む声もあり、盛会のうちに幕を閉じた。なお、本フォーラムの反響は大きく、福島民報、福島民友、河北新報の各紙は1面のトップニュースとして、他にもNHKニュース、朝日新聞、共同通信等で大きく取りあげられた。
福島県内の農業従事者、農業関係者の努力によって全量全袋検査やモニタリング検査などが実施されてきたが、現在、新たな検査体制に移行しようとして議論が進められている。だが、福島県内の農業も含めた産業の再生、国内外の風評被害には多くの課題が残されている。これから長期にわたってこの課題と向き合っていくことが必要である。CIDIRでは今後も原子力災害について研究をすすめていく。また、本フォーラムによって、福島県外での情報発信の重要性も確認された。今後とも、広域避難、水産業、廃炉などを課題として、研究集会を実施していく予定である。