鷹野さんと同僚だった頃

特集:鷹野先生のご退職に寄せて

纐纈一起
2018年3月1日

 当然,今でも同僚ですが,1983年6月に鷹野さんが大型計算機センターから着任されて,1993年4月に私が地震研究所内の別の研究部門に転出するまで,地震情報の全国ネットワークとデータベースを担当する同研究所の所内センターの,物理的に同じ部屋に勤務する同僚でした(鷹野さんは講師,私は助手でしたから上司ですが,あえてこう呼ばせていただきます)。20代後半の私は研究者としては紆余曲折してしまっていましたが,コンピュータに強く関連する担当業務と,生来のオタク的性格が相俟って,当時創成期だった「パソコン」を業務に生かす,みたいなこともやっていました。そこへコンピュータ研究の本流の鷹野さんが着任されたので,亡くなられた石田晴久先生や雑誌bit編集長の小山透さんなど,その方面の錚々たる方々をご紹介いただき,そのご縁が「MS-DOS」という解説書(写真)の共著や,大型計算機TSSへの通信ソフトの共同開発などにつながりました。前者はいまだに中古品がアマゾンにあがっており「MS-DOS解説書の金字塔」のカスタマーレビューをもらっています。後者は大型計算機センター長会議プログラム創造賞を受賞しました。
 鷹野さんはもちろん本来業務を責任者として立派に果たされ,そのご経験などからIT技術を地震による災害の軽減に生かす研究をCIDIRや地震研で続けていらっしゃいます。私の方は転出後ようやく研究者としての方向性が定まり,旧文部省の援助と各大学の協力により大都市圏強震動総合観測ネットワークシステムというプロジェクトを始めて,首都圏に強震動の総合ネットワーク,略称SK-netを構築しました。その際に,再び鷹野さんや,故菊地正幸センター長をはじめ古巣の所内センターの当時の方々に大変お世話になりました。SK-netによる強震動データの研究でScienceに論文を発表することもできました。特に,20年近く経過した現在でもSK-netが継続していることは,鷹野さんの卓越したIT技術とネットワーク管理能力に負うところが非常に大きく,それらが次の世代に引き継がれることを願ってやみません。