鷹野先生と歩んだCIDIR10年
特集:鷹野先生のご退職に寄せて
田中淳
2018年3月1日
鷹野先生とは、2008年の情報学環附属総合防災情報研究センター(略称CIDIR)設立当初から10年にわたり、ともにセンター運営にあたってきた。以前から、日本災害情報学会における活動を通じてそのお人柄や災害情報へのご理解を存じ上げてきた先生が、副センター長としてCIDIRに赴任頂けると分かった時は、心から安堵したことを昨日のように覚えている。
設立当初のCIDIRは、恒久ポスト1と5年見直しポスト1と、合わせて2つのポストという小さな、また不安的な組織だった。この組織を、現在の恒久ポスト3、特任教員2まで発展させてきた上で、2010年から加わった目黒教授、設立の連携部局である地震研究所および生産技術研究所からポストを提供いただき赴任してこられた古村教授、三宅准教授、大原准教授、沼田講師ならびに特任教授であった須見教授のご尽力があってはじめて可能であったわけだが、CIDIRの戦略や方針を定めていく上で、鷹野先生の貢献ははかり知れない。
とりわけ、私自身は東京大学という組織に学生の立場からしか接しておらず、研究者としてあるいは教員としての組織の文化や仕組みなど知らないままに、センター長という役割を果たさねばならなかった中で、方針決定に際して、鷹野先生にご判断を仰ぐことが殆どだった。
災害情報研究としてみれば、CIDIR設立時の大きなトピックは、気象庁が一般供与を始まったばかりの緊急地震速報をいかに社会で活用できるかにあった。そのためには、正しい技術理解と情報通信システム、受容側の認識と受信環境など文理融合が求められるという、ある意味CIDIR設立のミッションそのもの研究領域だったからである。具体的には、概算要求事項の特別経費「災害緊急情報を活用した大学防災情報システムの開発」に基づく研究活動がある。全学に緊急地震速報端末を展開し、またパソコン上でも入手できる環境を整備し、また多言語化を進めることができた。また、学内の主要建物に複数のIT強震計を設置し、各建物や各部屋の揺れを観測し、地震検知後に配信する仕組みも構築できた。
CIDIRの研究活動のみならず、大学本部の環境安全本部防火防災部の諸活動を企画・運営でもご一緒いただいた。大学の防災をプランニングしていく上で、地震学から情報工学にいたる幅広い知見を頂いたし、2011年3月11日に発生した東日本大震災をともに経験した仲間でもあった。ご退職後のCIDIR運営を考えると、個人的には不安の方が大きいが、この場では御礼と今後のますますのご活躍とを申し上げるほか術はない。