三重県に発表された大雨特別警報の課題

特集:特別警報ー課題と改善の方向性ー

三重県防災対策部災害対策課長 田中貞明

2014年12月1日

1. 特別警報の発表経過
 三重県では、台風第11号の接近に伴い、8月9日の日降水量が、津市白山で435.5ミリ、津市笠取山で393.0ミリ、亀山市で333.0ミリを観測し、統計開始以来の極値を更新した。このように、県中部地方を中心にかなりの量の降雨があった。この大雨に伴い、8月9日17時20分、三重県で初めての大雨特別警報が21市町に発表され、その後、順次追加して発表され、県内の全29市町が初めての大雨特別警報を経験することとなった。
 この時、土砂災害警戒情報は、8月9日8時20分津市中西部に最初に発表されて以降順次拡大され、最大15市町(地域)に発表された後8月10日13時10分までにすべて解除となった。その後、県内全域に発表された大雨特別警報は、8月10日13時45分以降17時15分にかけて、順次大雨注意報に切り替えとなった。
 今回の大雨特別警報は、3時間雨量と土壌雨量指数の基準を超える見込みとなったのが10メッシュを超えたことから発表の判断となったとのことであり、発表に際して基準を超えそうな4市と県に対し、発表の約5分前に気象台から事前連絡があった。

2. 特別警報発表で明らかになった課題
 今回の台風11号接近に伴う災害対応については、一部の市が市内全域を対象に避難指示を発令するなどの様々な対応が見られた。こういった対応について検証が必要と判断し、県内市町からの聞き取りやアンケート調査、意見交換会などを実施した。アンケート調査等では様々な課題が明らかになったが、これらのうち大雨特別警報発表に伴う主な課題としては、以下のとおり。
 ● 県内に発表されていた大雨警報が全て一斉に大雨特別警報に切り替えられたため、一部市町では、実際の気象状況が、特別警報が対象とする「数十年に一度」の気象状況と大きく異なっており、市町としては、避難勧告等を発令すべきかどうかで混乱し、住民としても、避難すべきかどうかで混乱した。
 ● 一部市町(8市町)では、大雨注意報から(警報を経ずに)大雨特別警報に切り替えとなったため、態勢の整備、住民への迅速な周知等必要な対応が遅れた。
 ● 発表の順序として、通常は、大雨注意報→大雨警報→土砂災害警戒情報→大雨特別警報となるが、解除に際しては、土砂災害警戒警報の解除が大雨特別警報の解除よりも先となり、不自然な状況もあった。

この他、市町には、住民から次の様な問い合わせが多くあったことが判っている。
 ● 特別警報であるにもかかわらず、通常の警報と変わらない雨風である。本当に避難が必要なのか。
 ● 雨が止んでいるのになぜ特別警報が出されたのか。

 また、アンケート等では、大雨特別警報の発表の在り方等について改善を求める多くの要望も寄せられた。
 ●発表区域の見直しを求める要望 16市町
 ●事前連絡・情報提供を求める要望 9市町

3. 気象庁への提言活動
 県では、市町から多くの意見等があったことを受けて、平成26年9月19日(金)、気象庁に次の2点について提言活動を行った。
 ① 特別警報の発表について、府県予報区単位で判断せず、各地域の状況に応じ、市町単位や地域ごとに判断するなど、きめ細かな発表に見直すこと
 ② ①の見直しを踏まえたうえで、特別警報の発表前には、気象庁又は気象台から関係自治体への速やかな情報提供を行うこと

当県の提言を受けて、気象庁の回答は次のとおり。
 ●提言については、真摯に受け止め対応していきたい。
 ● 「市町単位や地域ごとに判断するなど、きめ細かな発表」については、特別警報の発表基準が府県程度の広がりを持つ広域での大雨というものを特徴としており、現在の予測技術から考えて、かなり困難な課題であると考えている。
 ●三重県の大雨特別警報は、3時間雨量の基準などを基に出したものであるが、ギリギリの状況で出しており、物理的な 問題も含め、リードタイムをもって事前に連絡することは、なかなか難しい。
 ●今後、技術の改善やリードタイムをおいて発表するといったこともできるよう努力したい。

 三重県としては、今回の検証を踏まえ、市町と連携して特別警報が出された場合の対策を講じていくとともに、気象庁には引き続き提言事項の早期実現を求めていきたい。