第2回復興定点調査における被災者の落ち着きと迷い

シリーズ「東日本大震災」

東京大学大学院 学際情報学府博士課程 小林秀行

2013年9月1日

 CIDIRは調査会社サーベイリサーチセンターと共同研究で東日本大震災復興定点調査の第2回調査を、昨年度に引き続いて実施した。本調査は、東日本大震災からの復興の中で、被災者の抱える希望と迷いを量的調査と質的調査の両面から明らかにしようとするものである。昨年度は、高齢、資金難、行政計画の遅れという制約条件によって、被災者が希望する住宅再建意向を自己決定できない状態にあることを明らかにした。ここでは、第2回調査の速報として量的調査の結果を報告する。
まず、本年度の調査に実際に携わった筆者の所感としては、調査に協力頂いたいずれの仮設住宅でも、昨年に比べて、人の出歩く姿や子供の遊ぶ姿が増えてきており、未だ多くの困難を残しているとはいえ、1歩1歩ではあるが、着実な被災地の復興への変化を感じた。
 調査結果からは、実際に仮設住宅での生活について、生活が「落ち着いてきた」と感じている人は23%、「少し落ち着いてきた」と感じている人は49%と、合わせると7割以上が2年たって落ち着きを感じていることが明らかになった。実際に、6割以上の人が、「少しずつ前向きになっている」(64%)、「周囲に笑顔が増えてきている」(61%)と感じるようになっている。しかしながら、その一方で、「生活に張りがない」(43%)、「気持ちばかりがはやる」(36%)、「頑張ることに疲れる」(34%)と感じる人も少なくない。
 具体的には、「将来どこに住むか」をいつも考えている人が53%(1年前は44%)、よく考えている人が21%(1年前は24%)、「商売・仕事・収入など経済的なこと」をいつも考えている人が33%(1年前には22%)、よく考える人が16%(1年前は22%)と、昨年の調査でも中心課題であった住宅や生活の再建については、問題は改善されていない。
 現在の生活への不安についても同様である。震災前と比べて家計が「非常に苦しくなった」人は21%、「少し苦しくなった」人は23%とあわせて4割を超えており、昨年の約5割と比べて減少しているものの、依然として高い水準にある。むしろ、非常に苦しくなったとする人は若干ながら増加しており、昨年よりも経済環境が悪化した被災者が現れている。
  「心配事があってよく眠れない」(36%)や「気が重くて憂鬱になることがある」(36%)といった精神的ストレスを示す人の割合も1年前と比べて若干悪化している。
 自宅を再建する上で感じている問題として、56%が「再建資金」を、51%が「行政の復興計画の遅れ」を制約条件であるとしている。これらの制約条件以前に、「年齢」や「元の場所に戻れない」ことも4割の人があげている(図1)。また、自宅を再建する上で重視する点としては、「津波から安全であること」を最も多い69%が非常に重視すると回答している。被災者の多くは、1年前と同水準で、津波に対する防災対策を極めて重視している。この他に「医療機関」や「福祉施設」、「店舗」といった施設があげられ、生活上の不可欠な機能として重視されている。「知り合いの存在」という、地域社会の再建をあげる人も少なくない。このことから、住宅や生活の再建について、被災者の希望とその制約条件に変化はなく、迷いは解決されていないと考えられる。
 これらの結果から、仮設住宅への入居から1年以上が立ち、被災者を取り巻く生活環境が全体的には落ち着きを見せる一方で、長引く避難生活に家計の悪化、先の見えない復興といった課題に大きな変化はなく、被災者は、これらを背景としたストレスを、それぞれの生活の中でより大きく感じるようになっていると考えられる。

図1「自宅を再建する上で、どのような問題がありますか」