緊急地震速報で2度目のM8.0が示した課題

防災コラム

鷹野澄
2013年3月1日

 前号で紹介したCIDIR開発の緊急地震速報の学内放送設備による初めての館内放送が2012/12/7 三陸沖(M7.4)の地震で流れた。気象庁が緊急地震速報(警報)を発表したとき、本郷キャンパスは警報地域の外であったが、本放送設備の巨大地震モード条件(前号参照)により、揺れが到達する60秒以上前に[巨大地震です][安全な場所で身を守って下さい]と放送が開始された。
 この時の緊急地震速報のマグニチュード(M)は、地震波検知から6.6秒後にM7.8、14秒後にM8.0と急速に大きくなり、その後49.5秒後にM7.3に下方修正されるまでの約43秒間M7.8~M8と過大評価されていた。それまでに緊急地震速報で最大級のM8を発表したのは、2011/3/11東北地方太平洋沖地震(M9.0)だけである。この時は、地震波検知から65秒後にM7.9、80秒後にM8.0と発表は遅かったが、地震学的にみると「M8の断層破壊に要する時間は30~60秒」(菊地,2003)であるからやむを得ない。むしろ12/7三陸沖(M7.4)の時に、M7.8やM8.0が地震検知後6.6秒や14秒といった短時間に出されたことの方が不自然なのである。今回は「警報が早く広く出たのだから結果オーライ」では済まされない。緊急地震速報で最大級のM8が巨大地震でもないのにたやすく出されるのなら、その情報の活用は極めて困難となる。