報告書 日本人の安全観
2005年3月1日発行
①災害の概要
大地震、原子力発電所事故、公害・環境問題、食品汚染などの人間の生命・健康に関わるリスクに関する情報伝達は、迅速且つ正確でなければならず、関連する情報の公開性・透明性も確保されていなければならない。しかし、そのような情報伝達が行われたとしても、これらのリスクに対する人々の評価が適正になされるとは限らない。日本人の安全観を解剖し、現代生活における主要な安全問題への心理的意味を把握し、有効なリスク・コミュニケーションのあり方を探る必要がある。
②調査の内容
「日本人の安全観」に関する社会心理学的調査:調査対象者:住民基本台帳により抽出した各地域20歳以上の男女600名(静岡県、長野県、茨城県、埼玉県、熊本県、東京都)、調査方法:訪問面接調査法、調査期間:平成15年3月1日~14日、平成16年1月31日~2月14日、平成17年1月8日~19日(東京都)
「日本人の安全観」に関する社会心理史的調査研究:調査対象者:朝日新聞、毎日新聞、調査方法:新聞からの関連記事の収集・分析、調査期間:平成15年3月、平成15年11月~平成16年2月、平成16年5月~平成17年3月
「日本人の安全観」に関するインタビュー:東京都在住の子持ち主婦、子持ちの企業務め男性、抱く新女性、独身男性からそれぞれ6名で4グループ形成、グループインタビュー
③主な結果
日本人の安全観:日本人の安全や安心を構成する要素には、1)科学的安全性、2)安全性への知識、3)安心・不安感情、がある。不安感情を強める要因として、多層に積み重なる安全観の存在が認識された。専門家でない人々の安全への認識や安心・不安感情を考えるには、科学的安全性以外の要素が重要となるが、それは、1)報道・情報に影響を受けやすい不安の存在、2)災害観と呼ばれる考え方・概念が事故や環境汚染にも関係すること、3)感情的な安全認識の存在、が示唆されている。
報道の分析:安全に関する認識以外に「信頼」に関することについても抽出された。a)信頼を取り戻すのは大変である。b)安全性を主張していても不信感が増すだけである。c)政府は原子力の必要性、経済性を強調しすぎている。d)信頼感の熟成には情報公開が必要である。e)国民との理解・対話による信頼感の熟成が必要だ。f)地道な努力が必要である。
原子力の安全:原子力のイメージは多様であるが、中でも「事故の危険性」が多く挙げられている。最も多く不安感情を説明しているのは、「安全性については誰の言うことも信じられない」「国が人体に安全だといってもそれは信用できない」など、安全そのものへの不信感、安全に携わる人間への不信感である。「科学的安全性」を問題にしているのではなく、「安全は絶対にない」「人間に絶対は無い」「安全に携わる人への不信感」を問題にしている。
④提言・結論
・ 安全を伝えることが必要とされている時ほど、安全は伝わりにくいという「リスクコミュニケーションのパラドックス」がある。
・ 「科学」「技術」の問題というよりも「人間」の問題である。人々は「安全対策は当然するべきだと思うが、だからといって安心できるものではない」と考えている。
・ 安全観から考える「原子力広報」:安全を積極的に広報しない。安全の伝え方を工夫する。人間は「科学的安全性」ではなく、「粛々とした安全対策」「人間としてのあり方」によって「安全」だと判断するので、「信頼」を高める必要がある。