報告書 富士火山の活動の総合的研究と情報の高度化(噴火による社会経済的影響に関する調査研究 火山情報と避難のあり方の研究 その1)

2004年3月1日発行

① 災害の概要

富士山はこれまで平成12年末から、低周波地震が多発するようになった。ただちに噴火する兆候は見出されていないが、その活動状況を正確に把握し情報を適確に発信する体制を整備する必要がある。大学などの研究機関や内閣府防災部門において、富士山噴火を想定したハザードマップの策定、富士山噴火時の防災対策の策定が進められている。

② 調査の内容:

山梨県・静岡県・神奈川県・東京都の企業・主要ライフライン企業・行政、聞き取り調査、理論的サンプリング、対象75組織、実施37組織、実施率49%

③ 主な結果

【降灰地域の物流・交通面への社会的影響】:

一次的影響(物理的被害):交通・国内物流(故障車による渋滞、高速道などの通行止、鉄道の運行停止、バスの運行停止、空路の遮断)、国際物流(空路の遮断)

二次的影響(波及的被害):交通・国内物流(迂回路の渋滞)

【降灰地域の物流・交通以外への社会的影響(物流・交通による波及的被害含)】:

一次的影響(物理的被害):人的被害(富士周辺地、降灰除去の問題)、農業(地上露出作物の被害、降灰による土壌変化)

二次的影響(波及的被害):農業(風評被害、離農)、通信(通信輻輳)、医療(医薬品・患者の輸送手段の欠如)、産業(供給・原材料遮断、労働力欠如)

【降灰地域以外の人々への影響】

二次的影響(波及的被害):交通障害・物流麻痔、企業活動の障害、生活物資の全国的不足(国内・国際)、輸出輸入手段の限定

④ 提言・結論

・富士山が噴火した場合の宝永噴火規模の「降灰被害」だけを想定したものであり、それ以外の現象(土石流、溶岩流、火砕流など)があった場合はさらに大きい被害になると予想される。本研究で示唆される重要なことは、降灰による被害だけを想定しても、甚大な被害を受ける可能性があり、それは、富士山周辺の局地的な災害というよりも、全国的な社会経済的被害になる可能性が高いということである。

・今後の課題としては、「物流・交通面で、中央道、東名道、首都高、新幹線および降灰域の鉄道、首都圏鉄道、国内・国際線航空路が遮断された場合に生じる社会経済的影響の検討」、「想定した一次被害、二次被害の予測項目が安当なものであるかの検討」、「取引業者の持つ供給不安によって受ける製造業の被害、消費者の旅行取りやめなどによって受ける観光業の被害についての詳細な検討」、「④降灰処理をどのような方法で行うのか、またそれが可能なのかの検討」などが、政策科学的に重要になると考えられる。

・本報告は、聞取調査を元にした想定シナリオの中間報告であり、今後、企業に対する調査票調査、サーベイ研究、降灰被害を経験した地域の関係機関の聞き取り調査、防災関係専門家に対する有識者調査を行い、これらにより批判・検討を重ね、想定シナリオなどを精緻化していくことが必要である。

・なお本研究では、個別具体的な影響は各企業、行政、ライフラインの実務家への聞取りをもとに議論が進められたが、降灰の下水施設に与える影響一内水氾濫、河川の氾濫の想定(降灰後、降雨があった場合排水面でどのような状況が想定されるか)、河川底に溜まる降灰量の推定(溢水の可能性の推定)、火山灰による無線通信、電波への影響、火山灰による水質への影響、火山灰による屋外精密機械・自動車機械への影響、火山灰によるボイラー・燃焼系統への影響(飛行模エンジンには影響を与えるので)、山灰による室内への流入状況、屋内精密機械への影響、

などの影響に関しては、今後の検討項目である。