報告書 2001年BSE(狂牛病)の社会的影響と対策
2003年3月1日発行
① 災害の概要
2001年9月10日、日本ではじめて狂牛病に感染した牛が確認された。その後、さまざまな要因から牛肉の消費が落ち込み、10月30日、東京都食肉事業共同組合理事会は、全組合員に一律10万円の災害見舞金を支給した。「小売店は何一つ悪いことをしていない。(狂牛病による牛肉離れは)まさに災害と呼ぶにふさわしい」として、理事会は約9億円の特別積立金を取り崩したのである。狂牛病は世界がが初めて経験する食品由来の生物災害といってよい。
② 調査の内容:
20歳以上の男女、面接調査法、住民基本台帳より二段無作為抽出、平成14年3月、有効回収数622(抽出800、有効回収率78%)
③ 主な結果
狂牛病とは何か:「狂牛病」とは、正式名称を「牛海綿状脳症(BSE)」という。BSEにかかった牛の危険部位から異常プリオンタンパク質を食べることによって、「新型クロイツフェルトヤコブ病」に感染すると言われている。
BSEの疑いのある牛の発見と肉骨粉問題:9月10日、日本で初めてBSEの疑いのある牛が確認された。10月11日、擬陽性の牛が見つかり、牛肉の流通停止・回収を指示した。牛の由来の追跡が不可能だったため、市場流通がストップしてしまった。行政間の連絡体制の不備が露呈した。いままで問題になっていなかった、全頭検査の情報公開の方法が問題化した。全頭検査前の国産牛肉の買い取り制度を悪用した雪印食品や日本ハムの牛肉偽装事件をきっかけに、食品の原産地、成分などの偽装表示に問題がうつっていく。
行政・業界・報道の対応:日本はリスク管理が不十分でその認識も甘かった。日本の畜産行政は、農林水産省、厚生労働省の二重の管轄下におかれ、混乱が生じた。
BSE 問題における「風評被害」:輸入肉への性急な切り替えの過剰反応が、国産は危ないという主観的評価や評判を生み、その対応が報道各社を刺激し、その結果必要以上に牛肉消費を落ち込ませたといえる。10月18日の全頭検査開始以前は、すべての牛肉が安全であるとは言い切れないのだから、「安全であるにも関わらず消費者が買い控えている」という文脈で、風評被害という言葉を使うのはおかしい。風評被害の要因として、一部マスコミの過剰報道あるいはセンセーショナリズムがあげられる。
BSEに対する消費者の意識と変化:BSEの問題が起こる前に、BSEについて知っていた人は34%であった。牛肉を食べる回数はBSE 発見以前は、週に1~2 回食べていた人が51%だったのに対して、9月以降は28%と半分近くに減った。6割近い人は外国産牛肉を食べていない。「国産牛も外国産牛も安全ではないと思う」と答えた人が47%、「国産牛も外国産牛も安全だと思う」という回答の14%。
BSE 対策への意見:消費者は、BSE が社会問題になったもっとも大きな理由として、政府の対策の不備をあげており、「政府の狂牛病対策が十分でなかったから」80%、「マスコミが大げさに騒ぎ立てたから」11%、「生産農家が家畜の餌として肉骨粉を使ったから」8%であった。
④ 提言・結論
安全な畜産物生産と消費者対応の構築:今年9月10日に農林水産省生産局は、「BSE発生後1年の総括と今後の課題について」をまとめ、「BSE の発生の経緯について」では2001年9月以降5頭のBSE牛が確認されたこと、「価格・需給の状況」では牛価について持ち直して横ばいに推移していることが記されている。国は肥育農家に対して「BSE対応肉用牛肥育経営特別対策事業」「肉用牛肥育経営安定事業」によって補てん金を出し、食肉関連業者対しては1,056 億円の融資をしている。牛の「個体識別(トレーサビリティ)にかかる状況」では、このトレーサビリティは「食品がいつ、どこで、どのように生産・流通されたかなどについて消費者が把握できる仕組み」と定義されているが、そのためには消費者自身も、「安全な牛肉」を見分けられる知識が必要になるだろう。