報告書 都市水害における住民心理と情報伝達

2001年10月1日発行

① 災害の概要

1999年6月29日から九州北部地方では激しい雨が降り、福岡市でも記録的な降雨となった。福岡県内では河川が氾濫し、福岡市内中心部を流れる御笠川が3カ所で溢水し死者1名、床上浸水708棟、床上浸水703棟、半壊家屋2棟の被害が発生した。

② 調査の内容:

福岡市と東京都の地下街、地下街の通行者15歳以上の男女、面接聴取法、平成12年2月、3月、回収サンプル「博多駅周辺地下街」645、「浅草地下街」633

③ 主な結果

1999年福岡水害と災害情報の伝達:6月29日、西日本一帯を梅雨前線豪雨が襲い、福岡市ではJR博多駅近くのビルの地階にいた飲食店の女性従業員が水死した。御笠川が10時頃から溢水し、博多駅周辺を水没させたのが原因だった。御笠川の溢水情報は、博多駅周辺には伝えられなかった。

地下空間における水害対策の実態と問題点:地下空間の利用者は、水害に対する認識をもたないまま、地下街を利用している。地下街は、都市の中心にありながらも災害に対して脆弱な情報過疎地域である。地下空間が冠水した場合、水圧でドアが開かなくなってしまう可能性がある。ビルは、電源設備を地下に設置しているケースが多いく、電源設備が浸水すると、地下空間全体が停電するだけではなく、連動する他の施設まで影響が及ぶ可能性を有しているのである。

地下空間管理者の防災対策状況と課題:地下空間の管理者は、地上の状況を把握したり河川情報を収集するシステムを保有していない。浸水対策設備は、通常の地下街や雑居ビルの地下階などにはほとんど設置されていないのが現状である。電源設備「浸水防護対策」は、一度地下空間が浸水すると、電源設備自体が水没して、即座に電源供給機能が停止してしまう。

地下空間の防災対策のあり方について:災害時の情報の伝達ルートに関して、河川管理者→市町村→地下街管理者→地下街利用者といったルートによって伝達することとしているが、情報途絶の可能性をなくすことが重要である。避難訓練の実施の検討、避難経路の検討及び通常点検の実施の検討、避難場所の設定の検討が必要である。地下空間における浸水被害に備えた浸水対策の構築に向けて、浸水防止施設設置の促進の検討、電源設備の浸水対策の検討が必要である。

地下街通行者の水害意識に関する調査:

「博多駅周辺地下街」:居住地域は、平日では福岡市内が6割以上を占めるのに対し、休日では市内在住者と市外在住者が半々であった。全体的に火災と水害を挙げた人は5割以上であり、他の2災害よりも地下街と結び付けやすい。

「浅草地下街」平日・休日比較:居住地域は、平日では23区内が54.3%と若干多かったのに対し、休日では23区外が52.5%であった。主に地震が6割近くの人に挙げられ、次いで火災が平日54.6%、休日42.5%によって挙げられている。

「福岡駅周辺地下街」「浅草地下街」比較:利用頻度は、博多・浅草ともに分布に差が見られなかった。利用時間帯については、やや早朝利用が多い浅草と、昼時の利用が多い博多という特徴が出た。博多では「水害」が61%の人に挙げられているのに対し、浅草ではたった27%であった。逆に浅草で6割近くの人が挙げた「地震」は、博多では3割を切っている。

④ 提言・結論

1999年福岡水害と災害情報の伝達:地下水害対策は地下鉄・地下街・連結ビルが有機的に連携した総合的な対策が必要である。

地下空間における水害対策の実態と問題点:発災時に自分はどのような状況におかれるのかを知らせ、リアルに危険性を認識させようとすることが、利用者の関心向上の糸口になる。だたし、こうした試みも単発では、利用者の平常化傾向に凌駕され、防災意識は風化の一途をたどることになる。地下街利用者の防災意識を常に高い水準に保っていくために、施設管理者や管轄市町村は、平素より当該地下施設の被災可能性について情報提供を継続して行い、発災に備えるべきである。