報告書 過密空間における震災時の人間の行動
1990年10月1日発行
① 災害の概要
都市地震に対する有効な防災対策を考える場合には、ハードな対策だけでは不十分である。また、被害が発生してもその規模を限定化し、震災からの早期復旧を可能にする社会システムの構築が必要である。そこでは、地震時のパニック問題、人口の滞留問題、水・食料の不足といった地震発生直後の緊急対策期における社会システムに関する研究と共に、その後の長い復旧対策期における被災後の住環境の提供・管理システム、被災者の心身の健康管理システム、災害復旧情報の提供システムといった社会システムの整備が求められている。
② 調査の内容
一般通行者・利用者、施設管理者調査:調査地域:東京、大阪、神戸の地下街、駅舎、高層ビル、大店舗・劇場、調査対象、標本数:17箇所の過密空間を通行中ないし滞在中の16歳以上の男女、各地点100名、回収数、回収率:1,849(回収率77.1%)、調査方法:個別面接法、調査期日:1997年8月5日~9月20日
住民調査:調査地域:東京都大田区、北区、江東区、杉並区、調査対象、標本数:406人、調査方法:調査員による訪問留置、調査期間:平成10年11月13日~11月30日
若年層に対する調査:調査地域:京阪神、神奈川県、静岡県、調査対象、標本数:京阪神3大学、関東学院大学、静岡大学の合計492人、調査方法:調査員による聞取り調査、調査期間:平成10年1月、平成10年3月~4月
③ 主な結果
地震不安意識:地域別で最も不安の高かったのは「東京駅地上ホーム」であった。地下街に関しての不安度は東京より大阪・神戸のほうが低かった。
都民の不安:回答者全体の約85%が不安を感じている。最も危険なところは木造家屋であると回答している。大地震時には交通事故や環境汚染問題も発生すると思っている。
企業の危険認知とリスク・マネージメント:直下型地震の危険に関する認識について「安全」と答えた企業は8.5%、「大体安全」は38.5%である。
震災時における障害者の行動実態:当日の行動を見ると、「なるべく外に出ないようにした」人は64.5%であり、外出を控えたきっかけとして、「県が屋内避難するように呼びかけたから」とした人はあまり高くない。伝達媒体としてはテレビが有効であった。
災害情報システム:現在の自治体の災害情報システムはかなり充実してきており、固定系と移動系の併用が圧倒的に多い。その整備状況に都市規模による差異が存在している。情報内容は注意報、警報、避難命令、避難誘導に関するものが最も多く、災害発生情報や地震、津波、噴火、積雪などの情報、河川、台風・風水害、高潮、土砂流も多い。
神戸市における応急仮設住宅の設置及び管理:必要個数決定や財源の問題が発生し、早期整備が遅れた。入居者の決定に付いては優先順位をつけて行われ、高齢者や障害者などの弱者が集中入居し、多くの問題が生じた。
④ 提言・結論
・利用者の不安を軽減・緩和し、混乱を防止するためには、設備について利用者が現在位置と避難方法・経路などの情報、安全情報を速やかに明確に理解できるよう、整備と工夫を行う必要がある。
・日ごろから障害者ネットワーク形成やサービスの拡大、相談窓口の整備と普及などを通じて、隠された弱者を減少させていく必要がある。
・ハード面の充実と共に、災害情報システムが実際の場面において役立つようにきめ細かなソフト作りが必要とされる。
・個人に対する支援策が不十分であるため、復興システムの確立が必要である。