報告書 企業の地震防災対策の現状と帰宅困難者問題 都内事業所アンケート調査から

2000年3月1日発行

① 災害の概要

東京都防災会議が平成9年8月に公表した東京を直下型大地震が襲ったときの被害想定によれば、都内全域で14万棟あまりが全半壊、38万棟ほどが消失、死者が7200人近くにのぼると予測されている。直後に交通機関の運行が停止し、帰宅が困難になる者は371万人と推定されている。

② 調査の内容:

有意抽出による郵送留置自記式質問票調査、東京都下企業、回収数=117社(16.7%)、平成11年5月14日~30日

③ 主な結果

企業の危険認識:「安全」と答えた企業が10社(8.5%)、「だいたい安全」45社(38.5%)、「やや危険」39社(33.3%)「危険」14杜(12.0%)となっている。全回答企業数117社のうち半数以上に及ぶ57社が建物倒壊の危険性を予測している。火災に関しては、70社以上が危惧している。

耐震診断調査:耐震診断実施42社(35.9%)・実施中1社(0.9%)・実施予定7社(6.0%)を全てを合計しても半数に満たなかった。また、「耐震診断」についてその内容が「分からない」とした企業は38社(38%)、実施予定がない企業も29社(24.8%)に上った。

企業における防災計画、緊急対策マニュアルの作成:防災計画、緊急対策マニュアルがすでに「文書で作られている」企業が65.8%ある。「文書化されていないがある」という回答の12.8%と加えると、防災計画やマニュアル的なものがある企業は8割近くに達している。

地震防災訓練の実施状況:企業の中で地震防災訓練を定期的に「実施している」企業は65.8%であり、「実施していない」企業は34.2%になっている。「電気・ガス・水道業」や「運輸業」、「劇場・ホール・映画館」などはすべての企業が地震防災訓練を定期的に行っていることがわかる。

防災訓練における避難行動の対策:定期的な地震防災訓練を実施していると回答した企業(77社・65.8%)のうち、「従業員の避難」と回答した企業が83.1%と、回答選択肢で挙げた内容の中で一番多くの回答があった。

企業独自の防災対策:「独自の防災対策をしていますか?」という質問に対して自由回答をしてもらったところ117の企業中回答があったのは、18社(15%)で挙げられた対策は全部で23項目となった。

具体化が課題の帰宅困難者対策:帰宅困難者「80%以上」が26.5%、「40~60%」が23.9%、「60~80%」が22.2%となっており、「見当がつかない」も5.1%であった。

④ 提言・結論

(ア) 各企業が、(各企業の防災担当者が)もっと防災対策について(例えば、地震の危険性と耐震診断、安全対策や地震保険など)について学び、知り認知する必要がある。企業規模が小さいほど防災対策が滞りやすい傾向がある。必ずしも企業の防災対策は経営規模の大小に比例する訳ではない。だが潜在的に防災対策は経営規模によらず必要である。今後は、このことを認識して企業の防災対策、リスク・マネージメントをデザインしていく必要がある。

(イ) 防災計画、マニュアルが全く存在しない約2割の企業と加えて、約3割の企業にはこれから文書化された防災計画、緊急対策マニュアルの作成が必要であると思われる。

(ウ) 企業防災について考えるとき、防災に対する設備などハードの側面で対策を進めるのは投資やコストパフォーマンスの面で困難である場合が多い。それは特に中小企業などで現状としてみられるが、情報というソフトの側面を強化し、それが防災計画や防災訓練に活かされることによって、より有益な防災計画、防災対策が作成されることが望まれる。

(エ) これからの課題としては、従業員の避難:をより確実に行うことができるための方策を検討することや、まだまだ避難訓練等で取り上げることの少ない外来者の避難についての徹底などが挙げられるだろう。