報告書 平成10年8月那須集中豪雨災害における災害情報と住民の避難行動
2000年3月1日発行
① 災害の概要
1998年8月26日台風4号が接近した影響により、那須町を中心とした栃木県北部が集中豪雨見舞われた。26日から30日までに1200mmを超える降雨があった。那須町を流れる余笹川と黒川は氾濫し那須町では死者3名、行方不明2名、負傷者21名が出た。家屋の流出、全半壊、床上浸水などの被害のほか畑・道路の冠水などの被害に見舞われた。
② 調査の内容:
訪問面接調査法、栃木県那須町、対象地区に在住の世帯主、サンプル数450件、有効回答数(回収率):450件(エリアサンプリングのため100%)
③ 主な結果
那須長の災害対策:自治体が対応しきれなかった部分はあるが、その後の救助活動、避難行動は比較的に円滑に行われたといえる。しかしながら、住民の避難行動、避難生活に関して、従来から指摘されているような問題点が見られた。災害時における情報のやりとり、そしてそれを可能にするメディア・コミュニケーションの重要性を指摘している。
気象情報の流れ:8月26日宇都宮地方気象台は、「大雨・雷・洪水注意報」を発表した。27日1時50分の段階で、宇都宮地方気象台は「大雨・洪水警報」を発表している。
河川情報の利用可能性:今回の水害では、那須町北部での集中豪雨が余笹川・黒川の水位を増加させ、それが後に茨城県の那珂川を増水させ、水戸市において那珂川の氾濫をもたらすという、市町村や県を越えた被害をもたらしている。
住民の非難行動と情報に関するアンケート調査: 96%の回答者の家族には被災死傷者が出ていなかった。自宅については全く被害のなかった人が、約6割であるが、自宅が床上・下浸水した回答者の割合は約3割である。「大雨・洪水警報」を聞いた住民は34%であり、残りの65%は「聞かなかった」と答えている。「大雨・洪水警報」を聞いた手段で多いのは、「消防署員・警察署員・消防団員」から直接聞いた人、テレビやラジオなどのメディアから聞いた人が多い。
大雨・洪水警報、避難勧告に関する情報:27日に「大雨・洪水警報」を聞いたと回答した人は34%だった。「消防署員・警察署員・消防団員」で37%、次いで、「テレビ」(32%)、「ラジオ」(31%)の順だった。
災害発生当日の情報ニーズ:災害当日知りたかった情報は「余笹川・黒川の増水に関する情報」が24%と最も多く、次いで、「自分の住んでいる地域に起こっている被害についての情報」が22%、「自分の住む地域がだいじょうぶかどうかという災害予測情報」が22%、「降雨量や今後の雨の見通しなど詳細な気象情報」18%の順であった。
放送の問題点:今回の水害が大変な事態であると判断したのは被害の情報が入ってきた5時~6時ごろであり、「防災放送」としての初動体制は十分なものにはならなかった。
④ 提言・結論
・ 今回の水害は、27日未明からの集中豪雨がこれまでにない記録的な降水量であり、しかも短時のうちに降る、あっという間の出来事であったが、対応の遅れが、被害をますます大きくすることを認識し、素早い対策を可能にするためのシステム作りが必要であろう。
・ 現段階では、契約料の問題等で、那須町のようにシステムを導入していない自治体がまだ多い。また、このような新しいシステムを導入するためには、それを利用する側の自治体やその担当者にも、そのシステムを活用するだけのリテラシーが必要となる。。情報システムの自治体における普及が望まれる。
・ 風水害の場合は、発生する災害がある程度予想できるため、事前の適切な情報を伝え、速やかな避難を促すことで被害(特に人的被害)の軽減が可能である。そのための、初動体制をとるための判断となる気象情報・河川情報など情報の充実が求められる。