報告書 土石流災害と情報 一97年秋田県鹿角市八幡平地すべり塵土石流災害の事例研究一
1999年2月1日発行
① 災害の概要
1997年5月11日、秋田県鹿角市八幡平熊沢国有林地内で大規模な土石流が発発し、250万立方メートルの土砂が崩れ落ち、澄川温泉と赤川温泉の2つの温泉の16世帯が全壊し、この地域の幹線道路である国道341号線が分断されるなどの大規模な災害となった。しかし、幸いにして、人的被害は生じなかった。
② 調査の内容
関係者への聞き取り
③ 主な結果
地域特性:土石流が発生したのは、鹿角から田沢湖方面に向かう国道341号線と、鹿角から岩手方面に向かうアスピーテラインと呼ばれる幹線道路に挟まれた澄川温泉南側の八幡平熊沢国有林地内だった。
前兆現象:前兆現象は、1)飲料水が濁り始めた(5月3日)、2)コンクリート舗装道路に亀裂が入った(5月7日)、3)わき水・温泉の湯の量が増した(5月8日)、4)地滑りにより裏山の電線ケーブルが切れた(5月8日)、5)山に地割れが始まった(5月9日)、6)泥火山から湯と泡が出始めた(5月9日)、であった。地元旅館の社長が9日の夕方、地質コンサルタント会社の職員をよび、5月10日午前5時頃この職員が大規模な地滑りが発生していることを発見し5月10日、宿泊客に事情を説明し全員を帰宅させた。
関係機関への通報にみる情報の流れ:それまでの現象の原因が大規模な地滑りの前兆であることを知った社長は、鹿角広域行政組合消防本部署長と鹿角市都市建設部長の自宅に直接電話した。その後、午前8時40分頃現場に到着した消防署長の判断により、8時50分頃、県鹿角土木事務所、鹿角市総務課、鹿角警察署、県消防防災課の4機関に電話により連絡された。
市などの防災関係機関の対応:防災関係者のメンバーがそろったのが10日午前11時過ぎ頃であるが、すでに消防署員らが現地調査を始め、住民の避難もほぼ完了していた。
避難勧告に伴う問題点:今回の土石流災害には、避難勧告の経験だがなかった、土曜日で休みだった、幹部職員が不在だったなどアンラッキーであったが、前兆現象がわかりやすい形で発生したことなど災害を小さくする要因もあった。
避難行動の実際:5月10日の段階で、まず、午前中に「澄川温泉」の宿泊客全員を自主的な判断で帰らせた。そして対策本部の設置後、午後4時49分、「澄川温泉」の従業員9人と現場監視に当たっていた消防署員らに対し最初の避難勧告が出され、午後六時までに大方の旅館の客と従業員を非難させた。11日午前8時前に大規模な土石流が発生し、赤川のさらに下流の「志張温泉元湯」と「ゆきの小舎」に電話で避難勧告が出された。直ちに「志張温泉元湯」の宿泊客3人と従業員3人、「ゆきの小舎」の従業員2人が避難を行った。これらの一般住民には、まず電話によって避難勧告が伝えられた。警察官や消防団員が1軒1軒まわりながら避難勧告を伝え状況を説明した。水沢会館が避難場所として指定され避難勧告を受けた住民が水沢会館に集まった。
マスコミ報道の功罪:今回の土石流災害は、テレビや断聞な・どのマスコミでも非常に大きく報道された。過激な報道により観光予約者からキャンセルが相次ぎ、八幡平の温泉旅館は経済的な大打撃を受けた。
④ 提言・結論
・ 土石流災害規模を減少するためには前兆現象をいかに把握するかということが重要である。
・ このような異常を発見したときの通報ルートの確保が重要である。
・ 避難勧告、避難命令を迅速に出す必要がある。
・ 避難誘導の確立(消防団の活用など)が重要である。