報告書 平成9年鹿児島県出水市針原川土石流災害における住民の対応と災害情報の伝達
1998年3月1日発行
① 災害の概要
1997年7月10日鹿児島県出水皮内の針原川流域で土石流が発生し、16万立方メートルの土砂が流出した。土砂は建設中の砂防ダムを乗り越え、さらに下流幅150メートル長さ600メートルにわたって流れ出し、住宅19棟が壊され、死者21名、重軽傷者13名が発生する大惨事となった。
② 調査の内容:
避難勧告地域にいた全住民112人、留め置き調査、1997年12月21日から1998年1月10日、回収数(率):73(65.2%)
③ 主な結果
土石流発生の状況:災害発生までに雨はやんでおり、山の変形や土砂の崩落などは確認されず、避難のしにくい深夜に発生していた。
行政の7月9日の対応:時間雨量が60mmを記録し、出水氏は被害の恐れがあると判断し、市内17ヶ所に避難所を開設して各地域の公民館長をつうじて自主避難勧告を有線で伝達した。雨は21時前にやみ23時頃までに避難場所は閉鎖されたが、24時過ぎに土石流が発生した。
ハザードマップ:鹿児島県出水土木事務所では96年に土石災害危険箇所マップを作成し針腹川も土石危険渓流として示されていたが、この地図は各世帯に配布されていなかった。同様の地図は97年にも作成され7月10日に住民に配布する予定であったが、間に合わなかった。
教訓と新たなる対策:今回の土石流災害の経験から、市内7ヶ所に雨量計を新設、公民館・公民館長宅へ同報無線の個別受信機を設置する、という対策が検討されている。
人的被害の状況:土石流は午前0時に発生し、ほとんどの被害者は就寝中に家ごと流されるか、音を聞いて目覚めた人も逃げる暇はなかった。
非難行動のイニシアティブ:避難した人はいなかった。有線放送が非難行動に直結しない構造があったのではないか。避難所へ来ても誰もいないので帰宅するという、設営上の問題点もある。
危険認知:激しい降雨があったが6割の人は「針原で被害はない」と感じ、被害が出るかもしれないと感じた人は4割弱で、あったとしても「川の氾濫」程度の想定しかなかった。
有線放送の効果:有線放送で伝えられた自主避難勧告を半数近くの人が聞いているが、そのうちの7割の人は危険を感じていなかったが、4割近くの人が川の水位を確認している。
非難行動:指定の避難場所に避難した人はゼロであったが、知人宅等に避難した人は6人おり、そのうち2人は災害前に自宅に戻っていた。避難を話し合った人は4割ほどで、周りが避難しなかったから、非難を取りやめた人もいた。
土石流に対する知識:土石流の危険性を知っていたのは全体の1/4で、「言葉はしているが内容を知らない」44%、「崖崩れ程度のもの」と考えていた人29%であった。針原川が土石災害危険地域に指定されていることを湿地他人は64%であった。
前兆現象:31.9%の地鳴りを聞いており、16.7%の人は川の水が急激に減っていくのを見ていた。流木が流れていくのを見た人も8.3%いた。
④ 提言・結論
避難勧告が出されなかった要因:出水市が非難勧告を出さなかった要因は、市南部の土砂災害や洪水に注意が向き、市北部の警戒が盲点となった。
住民が避難をしなかった原因:住民が避難をしなかったのは、住民の注意が洪水に向いていたため雨がやみ水位が下がったことで安心してしまった、土石流に対する知識がなく前兆現象を非難に結び付けられなかった、などである。
今後の課題:住民に対する日頃の啓蒙活動が重要である。また、地域住民が前兆現象を捉えた際にそれを行政にフィードバックするシステムが必要と考えられる。