報告書 地下空間と人間行動
1991年3月1日発行
① 災害の概要
大深度地下における防災対策については、自治省消防庁の「地下空間における消防防災対策に関する調査研究委員会」、運輸省の「大深度地下鉄道の防災に関する調査研究委員会」、東京消防庁の「大深度地下空間消防対策検討委貝会」などでも検討されているとおり、大深度地下の利用を考える場合には防災的な観点がきわめて重要である。例えば地下空間で火災が生じた場合、排煙設備や消火設備、警報設備はどうあるべきかなどハードな観点ばかりでなく、閉ざされた空間における人間の心理と行動の特徴(閉じこめられたことへの恐れ、暗闇への恐れなど)をふまえて、地下空間ではどんな形態の社会的混乱が発生しやすいのか、地下災害時の避難はどうあるべきかなど、ソフトな観点からの考案が不可欠になり、周到な防災対策が必要になると考えられる。
② 調査の内容
調査対象地として、八重洲地下街と新宿サブナードを選定し、個別面接調査を行ったものである。
調査時期 1990年2月7日(水)1990年2月11日(日)
訴査地域 東京駅八重洲地下街新宿サブナード
標本抽出法 無作為抽出
調査対象 上記地下街を通行中の16歳以上の男女
調査方法 個別面接調査法
有効回収数 720人(各地下街・平日・休日180人)
③ 主な結果
地下街通行者に対し、大深度地下開発の是非、および大深度地下利用の意図について質問した結果、 大深度地下開発の是非については、八重洲地下街、新宿サブナードともに、「東京は土地が狭く人口が多いので、安全が確保できれば積極的に地下を開発し有効に利用すべきだ」という積極的推進派がほぼ2割(八重洲地下街18.3%、新宿サブナード22.8%)であった。また、「本来は人口や資産を地方に分散することが望ましいが、なかなかむずかしいので、安全を確保しながら利用するのなら地下開発もやむを得ない」というやや消極的是認派が6割(八重洲地下街58.3%、新宿サブナード56.4%)弱であり、これらを合わせると大深度地下開発については、ほぼ5人に4人がこれを認めているという結果が得られた。他方、「地下開発は安全性にも問題があり、人間の生理と心理にも良い影響を与えないので反対である」という開発反対派もおよそ2割(八重洲地下街22.3%、新宿サブナード19.7%)いた。
④ 提言・結論
調査の結果、大深度地下の利用意図をみると、住居空間やビジネス空間として利用してもよいという人は少なかった。 とくに、大深度地下を居住空間として認める人は、2つの地下街で4~5%ときわめて少数で、90%以上の人が居住空間にはしたくないと答えていた(「絶対住みたくない」+「出来れば住みたくない」の比率は八重洲地下街が95.5%、新宿サブナードが95.3%)。 また、ビジネス空間としての利用も同じような傾向があったが、こちらは「仕事場にしてもよい」という人が5人に1人(八重洲地下街23.3%、新宿サブナード23.9%)、仕事場にしたくないという人(「絶対仕事場にしたくない」+「できれは仕事場にしたくない」)が4人に3人(八重洲地下街76.6%、新宿サブナード76.1%)の割合にのぼっていた。
一方、大深度地下をショッピング空間、あるいは通過空間として認める人はかなり多かった。すなわち、買物や食事などで大深産地下を「利用してもよい」という人は八重洲地下街で80.0%、新宿サブナードで78.3%、また地下鉄として「利用してもよい」という人は八重洲地下街で79.7%、新宿サブナードで79.4%であり、利用派が圧倒的に多い。以上のように本アンケート調査によれば、多くの人は大深度地下開発構想を肯定しているが、これを利用するのはショッピング空間、あるいは通過空間としてであって、住居空間、およびビジネス空間としての利用にはかなりの抵抗をもっているという結果が出た。