報告書 津波注意報・警報の対する自治体及び住民の対応―1989年11月2日三陸沖地震―

1990年10月1日発行

①災害の概要:

津波

②調査の内容

市町村調査:調査地域:津波警報および津波注意報が出された千葉県から北海道にかけての太平洋沿岸及び東北地方の日本海沿岸の178市町村、標本抽出法:全数調査、調査方法:郵送調査法、調査期間:平成2年3月5日~3月20日、回収数および回収率:136(回収率70.4%)

住民調査:調査地域:宮城県志津川町、岩手県田老町・岩泉町・宮古町・陸前高田町・大船渡市の20歳以上の男女3,000名、標本抽出法:選挙人名簿から無作為抽出法、調査方法:留置調査法(大船渡市)、郵送調査法、調査期間:平成元年12月19日~平成2年1月8日、回収数および回収率:2,098(69.9%)

③主な結果

岩手県の10月29日津波注意報への対応と11月2日津波警報発令までの対応:

県の対応は(i)職員の非常参集、(ii)津波注意報の入手と伝達、(iii)警戒本部の設置、(iv)その後、初動体制についての確認、をした。

岩手県の11月2日午前3時25分の地震に伴う津波警報への対応:

県の対応は(i)職員の非常参集、(ii)津波警報の入手と伝達、(iii)災害対策本部の設置、(iv)沿岸市町村の対応状況などの入手、であった。 

11月2日津波警報・注意報対象市町村の津波対策と応急対応実態:

地震発生直後に職員を非常招集したのは23%、揺れが大きく津波意識の高い市町村では43%と高かった。最初の情報源は「道県の防災行政無線」の54%が最も多く、次に「テレビ・ラジオの放送」であった。入手後に非常招集を新たに行ったり、招集範囲を拡大したのは約3割、災害対策本部または災害警戒本部を設置したのは2割であった。広報をした市町村は41%、伝達手段は防災行政無線と広報車が6割以上と多い。

津波警報への住民の対応:

津波警報を聞いて避難の必要性があると考えていた層では、実際の避難率も高くなっている。家族全員で避難した人が6割、指定避難場所に避難した人は4割程度であった。避難しなかった人で「避難はしなかったが準備はした」人が43%、「避難も準備もしなかった」人と合せて約7割に達する。市町村の避難の呼びかけについては「少しでも津波の危険があれば空振りを恐れず、、積極的に避難を呼びかけるべきだ」という考え方が住民の4分の3と圧倒的に多い。

④提言・結論

(ア) 最も大きな教訓は津波予報に伴う対応措置が地域防災計画で定められていたにもかかわらず、そのとおり実行したところが少なかった点である。

(イ) 津波情報伝達面では、判断をしやすくする環境の整備が求められる。ソフト面では予警報の広報基準の明確化が必要となる。ハード面では広報しやすい施設の整備が必要である。

(ウ) 避難の呼びかけは積極的に行うべきである。

(エ) 市町村が地震発生や津波警報の発表の都度避難の呼びかけをするかどうか検討するのでは時間的に間に合わないので、事前に明確な対応を決め、担当者に訓練などを通じて徹底しておく必要がある。

(オ) 現在、市町村の避難呼びかけを躊躇させている主な原因の一つは、既往オオツナミの浸水域を避難対象としているため、範囲が広すぎる点である。そのため、避難対象地区の階層化を計る必要がある。

(カ) 放送機関の津波に関する報道は、沿岸住民の避難行動への影響をよく考慮してなされるべきである。災害時の情報伝達はできるだけあいまいな表現を避け、適切な評価ができるような情報を強調しておくことである。