報告書 「自然災害の予測と防災力」研究成果 社会組織の防災力に関する研究

1990年3月1日発行

① 災害の概要:

本調査は自然災害の被災地域を選び、被災前計画と実際のずれなどを調べたものであり、伊豆大島噴火における公共機関の防災対応、千葉県東方沖地震の市町村の対応、日本海中部地震後の学校防災の実状、自主防災組織(ボランタリー集団など)の活動状況、水害にみる都市型(長崎)と農村型(小見川)の差異と水防組織の問題などを取り扱っている。

② 調査の内容

地方自治体における防災対策の実態調査:各市町村の地域防災の方針・経費・防災要点の実状、情報メディアの整備など。10都県の全市町村。全数調査、質問紙郵送方式、質問紙配布数:716、回収数377(回収率52%)

小・中学校調査:上記区市町村の中から、学校を抽出し、その防災対策の実情を調査した。標本調査、質問紙郵送方式、質問紙配布数615校、回収数298校(48.5%)

民間企業調査。各種企業体の災害時危険物などの配慮の現状。また、地域住民援助活動について民間企業の対処ついて調査。有意抽出、質問紙郵送方式、質問紙配布数644、回収数205(回収率31%)

災害時のデータベース保護に関する企業調査:民間企業のデータの災害保護対処について、東京証券取引所1部および2部上場企業を対象に実施。標本詞査、質問紙郵送方式、質問紙配布数820、回収数395、回収率48%

③ 主な結果

行政組織の防災力-市町村調査にみる実情と課題:調査対象とした市町村の防災機関の防災力は、資源構造、組織の体制とも都市規模が大きくなるにつれて充実する傾向があるが、総合的にみれば大都市のほうが危険である。また災害経験市町村の多くは、災害多発地域なかにあり、その防災力が高くても必ずしも災害に強いとはいえない。

行政組織の防災力-ケース研究の観点から:伊豆大島噴火などに対し行政機関が実施してきた対策のうち、情報伝達体制の整備の結果、前に比べて町からの情報が「ほとんど聞こえる」が65%、聞こえないほうが多いという回答も32%あり、より一層の整備が必要である。全島で結成された防災市民組織が「役立つと思う」人が73%にのぼる。

防災関係法令の制定過程と防災力向上のメカニズム:大災害が発生・予知の段階で地域住民・事業所からの要求がでて、地方公共団体が、政府に法令の制定または修正を働きかけることになる。災害対策に関する要求集約は既存の政治・行政システムの中でかなりうまく実現し、現在ある防災関係法令の体系が成立したと言える。

アンケート調査に観る自然災害に対する企業のデータ・ベース保護:「東海および相模湾地震などの広域災害」に対して情報処理施設の移転等の対応「計画がない」企業は82%にのぼり、データ・ベースの保護に対する企業全般の対応はすこぶる憂慮すべさ状態にあると言わなくてはならない。

学校防災体制の現状とその課題:本棚や頭上照明器具などの固定、避難路や避難場所を掲示するなどが実施されている学校は、せいぜい半数程度である。地方部の学校では防災体制の整備が全般に遅れている。学校の防災体制は、都道府県単位で実施されている防災指導の内容を強く反映している。

④ 提言・結論

防災関係法令の制定過程と防止力向上のメカニズムに関して:大都市における地震防災対策、とりわけ大震火災対策の充実があげられる。防災、特に災害予学報等の情報面において国の役割が増大するにつれて、地方公共団体の情報疎外が深刻化しており、何らかの対策が必要とされる。最後に、防災関係法令の整備が全体として、行政の防災力を向上させた結果、住民あるいは地域住民組織の防災力が著しく低下している点が問題と言えよう。住民の自助努力を促す方策を充実させる必要がある。

民間企業の災害防備の実態に関して:企業体の自覚的な取り組みの強化を期待するとともに、それを群発する自治体等の積極的な行政指導の強化を促したい。広域災害に対する防災計画の内容の充実とあわせ、ソフト対策の強化をはかる必要がある。地域防災における公共と民間の分担関係を明確にし、また、協力関係を促進することが望まれる。