報告書 噴火と防災-伊豆大島噴火後の防災対策と住民心理-
1989年3月1日発行
① 災害の概要
昭和61年11月21日伊豆大島は大噴火に見舞われ、12時間のあいだに1万人を超える住民が島外避難を余儀なくされた。これらの人々は12月19日から22日にかけてほぼ全員が帰島した。
② 調査の内容:
昭和62年2月調査(1,000名)のうち住所・氏名を特定できた750人、留め置き自記式、昭和63年2月25日~3月15日、回収数:577票、回収率:76.9%
③ 主な結果
61年11月21日の大噴火後の生活:
島外避難した場所と帰島した時期:島外避難してから大島に戻るまでのあいだもっとも長くいた所は「公共の避難施設」という回答がもっとも多く59%と過半数を占めている。
島外避難中の収入減:この約1ケ月にわたった島外避難のため、7割近い島民が収入減を訴えている。
帰島後1年間の収入減:帰島後の1年間の収入は約半数(50%)が「変わらない」と答えているが、37%の島民は「収入が減った」としている。
収入減への噴火の影響:帰島後の1年間の収入が噴火以前の年間収入とくらべてどの程度減ったかでは、「50万円未満」という人が21.3%で最も多かった。
大島全体の地域経済の変化:伊豆大島の地域経済が噴火後変わったかどうかでは、7割近くが地域経済の悪化を認めている。
再噴火への不安:
再噴火への不安:不安を感じている人は37%となっていた。
再噴火の可能性:61年と同規模以上の噴火が起こると思っている人は16%にすぎず、73%もの圧倒的多数が噴火があっても61年の噴火より大きくならないだろうと答えた。
噴火予知への信頼:
噴火予知一般への信頼:現在の科学技術の水準で大噴火の発生を「かなり正確に予知できる」という人は1%、「噴火の危険性は予測できると思う」人が59%、「予知はもちろん危険性の予測も難しい」が36%となっていた。
三原山噴火予知への信頼:「噴火の危険性は予測できると思う」人は61%、「予知はもちろん危険性の予測も難しい」という人が32%となっていた。
予知情報に対する評価:「予知情報は空振りを恐れず積極的に出すべきだ」と「噴火の見通しが確かになるまで出すべきではない」のどちらに賛成をたずねたが前者の「予知積極論」が45%後者の「予知消極論」が32%となっており予知積極論が多数を占めていた。
行政の防災対策への評価:大噴火以後再噴火に備え「観測体制」の整備のほか行政が一体となって、通報体制の整備、情報連絡体制の強化、避難誘導体制の整備などの防災対策を実施してきた。もっとも高い評価を受けているのは「情報伝達体制の整備」で81%の人が評価した。
④ 提言・結論
大噴火からほぼ1年が経過したが伊豆大島では危険な状態が継続しており再噴火が発生している。しかし、身体に感じられるような大噴火の兆候はほとんどなく住民にはもう噴火は起こらないのではないか、噴火があってもそう大きくならないのではないか、という希望的観測が拡がっていることも事実である。大災害を経騒した直後には、住民の防災意識と防災対策がいちじるしく向上しふたたび大災害の危険がある場合にとりわけその傾向が強いが、災害から時間が経過するにつれ危険の兆候があまり感じられない場合にはそうした防災意識がしだいに低下していく。