報告書 災害警報の伝達とその効果に関する研究
1984年11月1日発行
① 災害の概要
災害情報は危険の発生を告げると共に、危険を回避すべく緊急の防止措置を講ずるよう指示を与える情報である。しかし、その意図した効果を達成できず、時には意図しなかった逆機能をもたらす可能性もある。警報を特性の違いに応じてタイプわけし、そのタイプごとに警報伝達と警報の効果に関連する要因を分析する考察が必要である。
② 調査の内容
災害警報の伝達体制ならびにメディア特性に関する研究:地震防災対策強化地域に指定された6県170市町村の防災担当センターセクション、郵送によるアンケート調査、1990年2月22日~2月28日
地域住民の警報に対する反応傾向の分析:東京都、焼津市に在住の20~69歳の男女各地域1,000名、郵送法におけるアンケート調査、1982年12月16日~12月24日
焼津市の自主防災組織に関するアンケート調査:焼津市の地震防災対策地域に指定された市町村の自主防災組織会長23名、総代268名、留め置き調査、1990年3月~4月末日
津波警報の伝達と住民の反応:地震防災対策強化地域に指定された北海道浦河町、浜中町、新潟県村上市、計2,271名、聞き取り調査
③ 主な結果
行政組織における情報伝達体制の研究:地震警戒宣言については、多くの市町村では同報無線、サイレン、広報車などをミックスして住民に周知する計画である。但し、これを住民に伝達するための広報文を既に決めている市町村は47%、その放送担当者を決めているのは64%であった。
地域住民の警報に対する反応傾向の分析:東海地震に対する東京都民の関心が強く、「東海地震説」を信じているものも多く、マスメディアの地震関連報道への接触度も比較的高い。しかし、東海地震に関する知識は不十分であり、東京都が被る被害についても過大に予想している。焼津市における同報無線の聴取度はかなり低く、放送内容が理解できた人は回答者の12%にすぎす、声だけ聞こえた人が38%、声も聞こえなかった人は50%に上っていた。放送が聴取できなかった理由としては、同報無線の「こだま現象」を上げた人が28%、声が割れるというのが20%であった。
地震予知情報に対する焼津市民の対応:焼津市民は東海地震に関し、地震そのものよりもこれに伴う津波に対し強い不安感を持っており、津波による建物の浸水・流出の危険をとりわけ重視している。市の指定避難場所について正確な知識を持っている人は少なく、一時集合場所を指定避難場所と混同している人もかなり多い。
焼津市の自主防災組織:自主的な訓練や市主催の訓練への参加度は高い。参加の質についてみれば、市主催の防災訓練にほぼ全世帯から参加した場合が多いが、自主的に開催する防災訓練の場合には、役職者と役付班員または特に熱心な人のみという形が多い。
災害警報の伝達と住民の対応に関する事例研究:1982年浦河沖地震、1983年日本海中部地震における津波警報は、気象庁の警報発令後30分経過しても、末端の地域住民のうち約5割程度にしか伝わらなかった。警報に関する情報に接した後、すぐに海岸線から遠ざかる避難行動をとった人は一人もいなかった。多くが身の安全よりも財産(船)保全を優先させる選択肢を選んだ。火山情報に対する住民の対応は、被害経験をもっているにもかかわらず概して火山情報に関する知識が十分でなく、日常的な防災準備も十分ではなかった。
④ 提言・結論
地震予知情報の伝達に関しては、その伝達体制の現状分析、伝達過程に関し確実性、正確性、迅速性などを促進したり妨げたりする要因に関するきめ細かい研究が要求される。同報無線は災害警報の伝達メディアとして極めて有効な役割を果たすことが期待される。その聴取度をできるだけ高めるため、地域特性を勘案した上で、同報無線の増設や配置の工夫、個別受信機の導入、運用面での工夫などの措置を講じることが必要である。過去の経験や伝聞による予備知識の集積により、各人の津波に関して形成している知識枠が、諸処の津波指標に対して人々が取る行動に最も大きな影響を及ぼす。警報を十分に機能させるため、具体的な行動指針を含ませ、迅速、的確な対応行動を取りうるような災害情報システムの伝達システムの確立が必要である、