報告書 災害時における携帯メディアの問題点

2005年3月1日発行

① 災害の概要

一般災害時には、どのような情報ニーズ(通信ニーズ)があり、各種のメディア(固定電話網、無線、テレビ・ラジオ、携帯電静等)はどのように伝えているのか、そこにはどのような問題があるのか、についてはこれまで起きた大災害をケースに検討を行う。

② 調査の内容:

800人、年齢12歳以上、関東圏50地点(層化2段無作為抽出)、訪問面接法、回収数621、回収率77%、2005年3月

③ 主な結果

「災害時の情報ニーズに関する文献整理」:発災前後の情報で重要なものは、避難のための情報(発災前の警報や避難勧告など)、助ける(助かる)ための情報(発災直後の被害情報や医療情報など)、安心するための情報(安否情報など)がある。

「新潟・福島水害と情報伝達の問題」:情報メディアの欠如から避難勧告が伝達されず避難が遅れた。情報が強制的に伝わる、プッシュ型の情報伝達手段の重要性が指摘された。また高齢者の犠牲者が多く、災害時要援護者への情報伝達や救出方法についての課題も明らかになった。

「2004年台風23号による水害と情報伝達の問題」:同報無線が整備され、避難勧告や避難指示が6割以上の住民に伝達された。当日の避難率も3割と高かったが、逃げ遅れた人も多かった。住民にどのように危機意識を持ってもらうかが次の課題である。また水害時には多くの国定電話が水没したために、携帯電話の役割がより重要になったほか、多くの被災者が、避難勧告等を市役所から携帯メールに強制的に送信するなどのシステムへの期待を持っていた。

「中越地震と情報伝達の問題」:固定電話や携帯電話が激しく輻輳し、安否情報の伝達に支障が出ていた。また停電のためパソコンのインターネットも使えなかったが、そうした中で、携帯メールは最もつながりやすく、災害時に有効であることがわかった。

「災害医療システムにおける通信の役割」:患者搬送先の決定に必要な連絡が携帯電話に大きく依存している実態が明らかになった。その一方でインターネットを使った広域災害救急医療情報システムは導入されていない消防本部が多く、導入されていてもほとんど本格的な稼働がなされていなかった。モバイルメディアが基幹メディアになっているが、災害時に輻輳など大きな問題が発生する。

「インターネット網の脆弱性」:インターネット網には、電源設備の脆弱性、回線・設備の集中、事故対応の難しさ、などの問題があることが明らかになった。

「災害用伝言サービスの活用」:安否の問い合わせが多かったこと、被災者に利用のきっかけがなかったこと、システム的には機能していたこと、携帯電話を駆使できる若い人にとっては使い勝手には問題はなかったこと、などが明らかになった。

「携帯メディア利用調査」:携帯電話またはPHSの利用率72%、携帯メールの利用率は57%、携帯ウェブの利用率37%であった。携帯電話の操作能力について携帯ウェブの利用で低めになっているが、メールの受発信、アドレス帳の登録、写真撮影などは「できる」とする利用者が多かった。一方、伝言ダイヤルを知っている人は50%、iモード災害用伝言板は31%と知っている人が多かったにもかかわらず、その使い方はわからない、という人が多かった。

「携帯電話を使った新防災システムについて」:災害時の携帯メディアの可能性について、携帯メールを使った119番通報システム、緊急地廣速報の伝達、携帯メールによる防災情報の配信、について検討した。

④ 提言・結論

本調査研究における検討を通じて、災害時のモバイルメディア運用の実態が明らかになり、現在においては、災害時にモバイルメディアが大変重要な責任を担うメディアになったこと、しかし輻輳を中心とする問題があることなどがわかった。様々なハード面の工夫がされ、輻輳などの問題に対しても成果が上がりつつはあるものの、それらの成果の利用面ではなお問題があり、さらに新たなハード上の試みが必要であることなどがわかった。