報告書 富士山噴火の社会的影響:火山灰被害の影響についての富士山周辺製造業郵送調査―富士山噴火対策研究:噴火による社会経済的影響に関する調査研究 その2―
2005年1月1日発行
① 災害の概要
平成12 年10 月から12 月、平成13 年4 月から5 月に富士山周辺で低周波地震が観測された。そして、これは富士山の噴火活動と関連性があることが火山関係学者によって指摘された。
② 調査の内容:
比例配分無作為抽出による郵送自記式質問紙調査、神奈川・山梨・静岡県下に本社・事業所を構える製造業の防災管理者、回収票数768社(回収率38%)、2003年2月
③ 主な結果
富士山噴火への関心、富士山関連情報の認知:「関心がある」と答えた企業は8割近くになる。「低周波地震と火山活動の関連性(78%)」「ハザードマップの作成(65%)」「避難訓練(56%)」の順に認知度が高かった。
企業の富士山噴火対策の現状と積極度:約半数の企業が、避難訓練への参加要請があった場合参加意志がある、と答えている(45%)。8割以上の企業が、富士山噴火を想定した防災マニュアルを作成する意図がある。富士山噴火を想定した防災マニュアルがある1.5%、防災マニュアルを作成する予定がある19%であった。富士山噴火関係の情報を得ている企業ほど、富士山噴火対策に積極的である。資本金規模が大きいほど富士山噴火対策に積極的であり、また従業員規模が大きいほど富士山噴火対策に積極的である。風評不安がある企業ほど、富士山噴火対策に関して積極的である。元々防災対策に積極的な企業ほど、富士山噴火対策に積極的である。
富士山噴火対策の促進・阻害要因:防災担当者が富士山噴火に関連する社会事象を認知している企業ほど、富士山噴火防災対策に積極的である。富士山噴火によって自社に風評への不安を考える企業ほど、富士山噴火防災対策に積極的である。
富士山噴火の企業活動への影響:クリーンルームが製造工程で重要な工場においては、「富士山噴火による大量の降灰」でこれがが機能しない場合は、生産活動はストップする。自動車が使用できない場合は、従業員が出社できない場合も考えられる。従業員が仮に出勤できたとしても、従業員が通常業務で使用するさまざまな交通手段が利用できない場合が考えられる。その場合は、商品の入荷・出荷や打ち合わせ・営業活動に多大な影響を与えると思われる。
生産への影響:医療用ソフトカプセル製造業者が、富士市、富士宮市地域で全国の8割程度を生産しているので、多大な影響があると考えられる。また、大手医薬品等製造Y 社が位置するので、抗癌剤などある種の特定医薬品の供給ができなくなる可能性がある。静岡県下には、再生古紙を利用したトイレットペーパーは富士市だけで全国シェア65%を占めている。これらが製造不能、出荷が難しくなる可能性がある。ある大手、複写機メーカーの感光体、トナーの生産拠点が神奈川県西部にあり、コピー機の消耗品が不足する可能性もある。ある大手フィルムメーカーのフィルム製造拠点が位置しており、医療用フィルム、カメラ用フィルムが不足する可能性がある。
④ 提言・結論
短期的な影響:従業員が出勤できないことにより生産活動の停滞、原材料の入荷先企業の休業、交通マヒによる入荷不能、入荷遅延、在庫不足、製造商品の出荷先企業の休業、交通マヒによる出荷不能、出荷遅延、降灰の直接的影響として、クリーンルーム、そのほか生産ラインの機能不全、品質低下や商品への灰・ちりの混入をさけるため生産・製造ラインの自主的判断による停止。
中長期的な影響:受注生産の場合、そもそも発注されない可能性がある。発注企業側のリスク回避のため、発注数減、もしくは、発注自体がなされない可能性がある。住宅関連商品、生活必需品以外の商品など災害の長期化により、需要が冷え込み、そもそも受注されない可能性がある。
長期的な影響:発注企業の海外や他地域のメーカーへの受注シフト。カンバン方式、長期的取引慣行の崩壊による企業活動の停滞、停止(中小企業の場合)。・製造拠点の変更(大企業の場合)。