報告書 災害時の避難・予警報システムの向上に関する研究
1993年3月1日発行
① 災害の概要
【水害】水害時の人的被害を防止・軽減する方法として災害発生前の避難が最も有効であり避難を円滑に行うためには避難・予警報システムの確立が望まれ、それを具体化するには現状の把握と分析が急務である。
【火山噴火】1990年11月17日に噴火活動をはじめた雲仙普賢岳は、91年6月3日火砕流によって死者・行方不明者43名という大被害を生み、その後も火砕流、土石流によって家屋や田畑に被害を与えた。現在まで1年半以上も続いた「警戒区域」の設定で、多数の住民が長期避難のなか地域経済活動が停滞している。
【津波】1792年の普賢岳噴火活動は、最後に眉山の崩壊とそれに伴う大津波を引き起こし、島原半島と肥後地方に合わせて死者1万5千人という未曾有の被害をもたらした。熊本県の沿岸部、有明海沿岸の多くの市町では、1991年6月の火砕流災害をきっかけとして、津波防災対策に取り組んでいる。
【地震火災】地震時の避難・予警報システムの構築し実効性をもたせるためには、その内容を大規模地震時の人間の対応行動特性を踏まえたものとする必要がある。行動特性把握のための事例解析の一環として、関東大震災、福井地震をとりあげ、災害体験者の手記や体験記録を収集し、分析した。
② 調査の内容
【水害】平時における市町村の防災活動に関するアンケート調査を全国3,261の全市町村(東京都特別区を含む)を対象として行った。郵送、FAX。総回収数は2,46l、全国での回収率は75・5%である。
【火山噴火】1991年8月に島原市、深江町の住民1300人に対して行ったアンケート調査の結果による。
【津波】有明海沿岸の47市町の防災担当者に調査票を郵送、回収33市町、回収率70%。1991年11月
【地震火災】関東大地震、福井地震に関する手記体験集を収集。避難行動等の行動記録が読み取れるものを159編、39編取りだし、分析の対象とした。
③ 主な結果
【水害】89%の市町村で昭和20年以降に自然災害が発生しており、最も多いのが風水害で、次いで豪雪、地震の順となっている。避難勧告・指示を発令した市町村は55%で、主に風水害が対象である。危険地の指定は80%で、住民に周知は65%。避難場所を指定は97%、住民に周知は56%に過ぎない。伝達方法は広報車83%、防災無線51%、警鐘・サイレン42%である。住民参加の防災訓練実施は14%で自主防災組織があるのは55%である。
【火山噴火】雲仙岳噴火では、大火砕流と爆発による噴石という予想外の事態にショックを受け不安をもつ住民が非常に多く、あいまいな情報が流れたため混乱が起こった。数多くの流言が広がったのも同じ理由であり恐怖や不安から生まれた流言は、今度はこれを強化する役割を果たす。
【津波】三陸沿岸では60%の住民が避難指示を屋外同報無線・有線放送から入手し、サイレン・半鐘からが58%である。相模湾沿岸では「サイレン・半鐘」からが56%で、「消防署・消防団など」がこれに次いで多い。駿河湾沿岸では、同報無線等からが76%に達した。次に多かったのは「サイレン・半鐘」である。
【地震火災】自分の目で状況を確かめながら避難した人が安全に避難しており、的確な情報を迅速に伝えるシステムがあれば、相当数の人の命が救われたものと判断される。
④ 提言・結論
・災害時に適切な対応を選択し被害を防止・軽減させるには、平時の対応が基本となる。市町村などの防災組織は防災計画を確立し、住民個人に周知・徹底しておく必要がある。とくに周知・徹底の面で十分とはいえず、改善すべき点が少なくないことが指摘される。
・災喜に対する人間の心理には2つの面があり、1つは、災害を軽視して無防備になること、もう1つは、災害を過度におそれて混乱することで、後者を恐れるあまり情報の発信に躊躇して、前者の結果を招かないように、日頃からの啓蒙・訓練が必要である。