報告書 チリにおける地震に関する調査
1987年3月1日発行
① 災害の概要
1985年3月3日(日曜)南米大陸西海岸のチリ共和国の約20㎞沖の海底15㎞の地点を震央としてマクニチュード7.8の大地震が発生した。チリ内務省防災局(ONEMI)の公式発表によれば被害は死者179名、負傷者約992,500名、全壊家屋約73,000戸、半壊家屋約148,000戸に達している。
② 調査の内容
地震前後の状況に関する調査:調査票を用いた個別面接調査(調査実施機関Gallup Chile)、ヒアリング、SANANTONIO市に居住する18歳以上の男女252名、1985年3月29日~4月3日
災害に対する態度の調査:調査票を用いた個別面接調査(調査実施機関Gallup Chile)、18歳異以上のSANTIAGO市民から900名を抽出、1986年5月19日より約2週間。
③ 主な結果
地震前後の状況に関する調査:
地震発生までの状況:チリは世界有数の地震多発国であり、約70%の人びとが過去に大地震を経験し、関心は当然非常に高かった。3月3日の大地震発生の前に50%の人びとが「大きな地震が発生するかもしれない」という不安を抱いていた。地方自治体レベルでは地震発生時に食料・水・医薬品・衣料などが備蓄されていた様子はなかったし、住民の防災訓練もおこなわれたことはなかったらしい。住民の地震や防災に関する知識のレベルも決して高いものではなかった。
地震発生時の心理・行動:地震が発生したとき人びとは非常に強い恐怖をおぼえたという。「揺れているときどのように行動したか」を質問したところ、もっとも多い行動は「子供や老人病人を助けに行ったり家族を落ちつかせ面倒をみた」26%、次いで「すぐに家から外にとび出した」で14%、「何がおこったかじっと様子をみていた」11%,「頑丈なものにつかまって身を支えた」7%,「安全な場所にかくれた」7%などとなっている。
持続的影響:地震発生後約1ヶ月経過した時点でも,大地震の恐怖がいまだ消えさることなく持続的な影響を及ぼしている。3月3日の地震が極めて強いものであったことにもよるしその後引続き発生した余震によって恐怖が強化されたことにもよるのであろう。
流言:SANANTONIOのサンプルの88%が流言らしきものを耳にしている。流言の内容は津波に関するものがほとんどである。
役に立った情報とメディア:「地震直後に不安を鎮めるのに役に立った情報」としてあげられたものをみると全体として安否情報といわれるものが強く求められていることがわかる。チリでもラジオが安否情報を積極的に流し評価されたという。
災害に対する態度の調査:
1985年3月3日のとっさの対応行動:「ドアのところに立った」という人が16%と最も多く、「揺れのおさまるまで待っていた」(13%),「家族を探しに外出したり家族と一緒にいたりした」(11%),「庭に飛び出した」(11%),「道路や広場に飛び出した」(9%),「家族のために安全な場所を探したり家族を落ち着かせたりした」(8%)と続いていた。
環境上の危険の認知:近隣環境の中でもっとも危険の認知度が高いのは交通量の多いハイウェーや通りである。建物の密集やこわれやすさ狭い街路なども比較的認知が高い。
大地震への不安:「大地震がまた起こるのではないかと思うことがあるか」と尋ね「ある」と答えた人は88%,「ない」と答えた人は12%だった。移転したいと思う人が34%となっている。
地震でこわい場所:サンチアゴでは地震でこわい場所として「エレベーター」という回答が15%でもっとも多くなっているが東京では5%にすぎない。
④ 提言・結論
チリは日本と同じく世界有数の地震頻発国でありながら、社会科学的災害研究は皆無であるので、これらの調査が同国におけるこの領域の研究の今後の発展に対して寄与することを願っている。