報告書 誤報「警戒宣言」と平塚市民

1982年8月1日発行

① 災害の概要

昭和56年10月31日の夜、神奈川県平塚市では市内45ケ所の同報無線の屋外スピーカーか、「警戒宣言が発令された」という内容の放送が誤って流されるという事件が起こった。

② 調査の内容:

調査対象地区:平塚市、調査方法:調査票による個別面接法、調査時期:昭和56年11月19日~11月29日、有効回収数:1,803票、有効回収率:75.1%

③ 主な結果

防災行政用無線導入の経緯:平塚市では、すでに昭和39年に一般行政用無線局を開設し、昭和54年には防災行政用無線局に改局し、災害時の情報伝達手.段としての機能も果たすようになった。

誤放送の原因:誤放送は機械操作の誤りによるが、原因は特定されていない。

情報管理上の問題:情報管理上の問題点としては(1)録音テープの使用と保管上の問題、(2)非常用放送設備の装置と機械操作上の問題、(3)放送施設の管理上の問題、という3点に集約できる。

警戒宣言」への接触:実際に「警戒宣言」をこのスピーカーから直接聞いた市民は約7人に1人の割合しかいなかった。「聞こえなかつた」が全回答者の4分の1を占めている。約20%の人たちは誤放送を聞いたが、内容を性格に聞き取った人の率は低かった。

同報無線の有効性について:同報無線の屋外スピーカー(子局)の設置数が少ないため、音声が物理的に届かない地域がかなりあった。サイレンが鳴らなかったため市民の注意を引かなかった。

「警戒宣言」の信用度:本当に警戒宣言が出たと思った人は2割にも満たない。警報を信用しなかった人びとが44.8%と半数近くに達している。

市民の対応行動:「警戒宣言」の誤放送が訂正されるまでの20分あまりのうちに、かなりの人々が何らかの対応行動を採った。事態の確認をとろうとしてマス・メディア等に注意する行動を行なった人がかなりの率を占めた。

誤報の訂正放送とその効果:平場市では誤放送があってから約20分後に同報無線を通じて誤報の訂正放送を3回繰り返し流した。パトカー12台が「先ほどの警戒宣言は誤報でした」という訂正放送を流した。消防本部では、消防分甲庁舎(19カ所)・分団長宅・および無線受信機の設置されている自治会会長宅(201軒)に電話をかけ.誤報の訂正とお詫びを伝えた。

10自主防災組織がとった行動:誤報に接した人達は大部分が活発な情報確認行動、情報伝達行動を採っており、同時に家庭内での防災行動も7例で行われている。

教訓と問題点:情報伝達のルールをよく理解していない自治会もあった。「警戒宣言」発令後の行動も明確にマニュアル化されていなかった。

④ 提言・結論

・ 本調査のように、誤報とはいえ実際に警戒宣言が伝達された実体験に基づく事例を研究することができた。

・ 多くの人びとは警戒宣言を、情報確認によってその信頼性をチェッグしていること、対応行動は全体として冷静かつ適切に行われ、パニック的な移動行動はほとんど生じなかった。

・ 同報無線の情報伝達能力には大きな限界があることがわかり、有効な伝達を妨げる物理的、状況的な諸要因も同時に明らかにされた。

・ 今回の事例では同報無線からの放送内容をはっきりと聞き取れた人が少なく、「警戒宣言が出た」「地震が来る」「冷静に行動して下さい」といった程度の内容しか伝わらなかった。

・ 平塚市の事例では実際に警戒宣言は発令されていなかったので、防災機関が応急防災対策を講じたりしていなかった点に留意する必要がある。