避難ガイドラインの歩みで
特集:田中淳センター長のご退職に寄せて
国土交通省 水管理・国土保全局河川計画課長 廣瀬昌由
2020年3月1日
私が、田中先生のご指導をうけるようになったのは、新潟・福島豪雨等で水害が相次いだ平成16年、先生が東洋大学におられた時からと記憶しています。中小河川で、特に高齢者ながらの方が多くお亡くなりになり、国交省では水防法の改正を射程に設置した検討会の委員に先生にご就任いただきご指導いただいたのが最初です。同時期に内閣府にも、故廣井先生を座長とする「集中豪雨時等における情報伝達及び 高齢者等の避難支援に関する検討会」が設置され、先生にも参加いただき、国交省も参画して、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」(以下、「避難ガイドライン」)を策定しました。
一連の検討では、私個人としては、内閣府、消防庁等と連携を図るのが初めてであり、災害にかかる社会学や情報学の先生方と本格的な関わりを持たせていただけたことが新鮮でした。検討会では、委員の方と一緒に現地調査を行いましたが、田中先生が、自治体との意見交換会で丁寧も核心をつく質問をされていたこと、車中等で気さくにいろいろご指導いただいたことをついこの前のように思い出します。
その後も、先生にはいろんな場面でお世話になりましたが、平成27年関東・東北豪雨での常総市等での被害、平成28年台風10号での岩泉町での被害等、近年も毎年のように各地で水害等が発生したことから、政府として防災対策の充実を図るために、内閣府に「水害時の避難・応急対策検討ワーキンググループ」や「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインに関する検討会」を設置し、いずれも先生に座長をお願いして検討を進めました。先生は、座長として議論をまとめていただきましたが、「現場」を重要視されており、必ず現地調査が組まれました。
検討会を踏まえた具体的な取組の一つとして、「避難ガイドライン」を抜本的に見直すことになりましたが、私が内閣府でその担当をすることになったことに、めぐりあわせを感じました。故廣井先生のご指導で具体的な歩みを始めた取組が、田中先生のご指導で充実が図られていると痛感し、それに携われたことに感謝する一方、責任も痛感しています。その後も、国交省、内閣府では、先生には、様々な局面でお世話になっていますが、地球温暖化の影響が顕在化している中、社会全体でソフト・ハードの両面から防災対策に取り組むことがより必要かと思っており、引き続きのご指導をいただきたいと思っています。