講義「災害情報論」の思い出
特集:田中淳センター長のご退職に寄せて
国立研究開発法人 土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター
大原美保
2020年3月1日
私は、2008年6月1日から2014年3月31日までの6年間、情報学環・総合防災情報研究センター(CIDIR)にて、センター長の田中先生にお世話になりました。田中先生との思い出は沢山ありますが、中でも、情報学環/学際情報学府の大学院生向けの講義「災害情報論」について、寄稿したいと思います。
「災害情報論」は、CIDIRの教員及び外部からお招きした専門家が各回を担当するオムニバス形式の講義で、私も何コマが担当していました。私は、東京大学生産技術研究所との兼務という立場でしたが、「災害情報論」の講義を通して他の部局の先生方のお話を拝聴することができ、大変勉強になりました。講義の主担当教員であった田中先生は、自分の担当回以外の講義にも全部出席され、それにならってか、当時CIDIRに所属していた他の先生方も聴講されていました。しかし、若輩者の私からすると、教室の後ろに田中先生をはじめスペシャリストの先生方がずらり並んでいる中で講義をするわけで、毎回緊張していました。中でも、田中先生の講義は大変興味深く、90分の時間があっという間でした。私が授業中に少しぼーっとしていたりすると、だいたい田中先生から「大原先生、どう思われますか?」という不意打ち質問が飛んできて、油断のならない授業であったことも、今では良い思い出です。私自身が講義を行う際には、話したいことや見せたい図表などがたくさんあり、てんこ盛りの内容にしてしまいがちだったのですが、田中先生の講義は学生に問いかけ、考えさせるような示唆に富む内容であり、講義の手法としても大変勉強になりました。
私が現在所属している土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、政策研究大学院大学の防災学プログラムとして、アジア・ラテンアメリカ・アフリカ等の途上国の行政機関からの研修生の教育・研修を行っています。私自身も、これまでに修士課程・博士課程の計15名の指導に携わってきました。講義や指導で学生に向き合う時や講義のスライドを準備する時、いつも田中先生のことを思い出します。田中先生のように学生に深く考えさせる講義を提供できるか、私にとっては毎回が試練なのですが、今後も、少しでも学んだことを生かしていけたらと思っています。
田中先生のますますのご多幸・ご発展をお祈りしています。