最悪に備える

防災コラム

酒井慎一
2021年6月1日

 火山災害に限らず「最悪に備える」とよく言われる。そのためには、災害の調査研究が必要である。
 過去に起きたことを知らないと、何が最悪になるのかわからない。だが調べれば調べるほど、多様であることに気がつく。現象は一つだけが起きるとは限らず、いくつかが連動したり、互いに影響を与えたりして、他の事象と複合するかもしれない。その中の最も酷いものを想定したとしても、それを上回るものが無いとは言いきれない。様々な可能性が考えられるため、次が最悪であるかどうかは、断定できないのである。
 そこで物事を統計学で推定しようと試みている。ただ、可能性の種類は多いが、一つ一つの事象の発生頻度は少ないので、得られる確率の精度は低い。しかも発生間隔は長期間で、不定期で、ばらつきが大きいし、すぐには次が起きないので、推定手法の検証が難しい。こうなっては、満足な防災対策を考えるのは至難の業であろう。
 それでは、どう備えるのが良いのだろうか。まずは、災害時に現場で何が起きているのかを把握する仕組みの構築から始めるのが、良いのではないだろうか。何が起きるのかを予測するのは難しいが、起きた事象を知り、その情報を伝え、そしてその情報に基づいて行動する仕組みを構築する必要がある。
 最近の技術を活用して、上手くできないものだろうか。