総合防災情報研究センター着任の抱負

特集:2020 11年目以降のCIDIRに向けて -CIDIR2.0-

教授 飯高隆
2020年6月1日

 私は、この4月より地震研究所から、総合防災情報研究センターに移動してきました。私のこれまでの研究の背景は地震学であり、特にフィールドに出て地震計を設置し、取得したデータで地震活動や地下構造を明らかにする研究を行ってきました。「地震予知のための新たな観測研究計画」や「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」では、活断層によって引き起こされる内陸地震やプレート境界地震の解明に向けた観測研究を行ってきました。
 このように理学的背景で観測研究を行ってきた一方で、2010年4月-2012年3月文部科学省学術調査官、2011年4月-2015年3月と2019年4月-現在まで自然災害研究協議会委員、2011年4月-2014年3月防災研究フォーラム幹事会メンバー、と災害や防災に関する委員をつとめ、防災や災害研究にかかわってきました。
 今後は、これらの経験を活かし、地震防災研究の発展に努めていきたいと考えています。地震災害を知るためには、地震発生から災害までの全体像を理解することが特に重要であると考えています。例えば、首都直下地震の全体像を把握するためには、どのような地震が発生するかの震源の情報、発生した波がどのようにマントルや地殻を伝播するかの波動伝播の情報、到達した波によって地盤がどのように応答するかの地盤情報、地震波が到来した際に建物がどう反応するかの情報、建物の倒壊や被災による損失の情報など、様々な要因があり、災害の全体像を明らかにするためには、それらの個々の要因について理解し、全体を通して把握することが必要であると考えています。
 しかしながら、私がこれまでに主体的に行ってきた研究は地下構造やその特徴を明らかにする研究であり、地震災害の全体を知る過程においてはほんの一部に過ぎません。そのため、自分の知識や経験では担当できない他の要因に関する領域においてCIDIRに所属する教員の皆様や、それぞれの要因の研究を行う方々と連携し研究を行っていきたいと考えています。また、現在のように地震の発生予測が困難な現状においては、どのような事象が起こりうるのかを明らかにし、情報として多くの人に伝え、理解してもらうことが災害の軽減に重要なことであると考えています。そのため、様々な研究者との連携によって得られた情報をもとに、どのような可能性やケースが考えられ、それぞれのケースによってどのような災害になるかを伝えていきたいと考えています。また、防災教育においても、地震災害の全体像を理解したうえでの自分の研究の位置づけを明らかにするような教育をおこなっていきたいと思っています。
 私は、インドネシアやニュージーランド、中国での国際観測の経験があり、国によって防災に関しての取り組みや対応は、さまざまな特徴や違いがあることを感じました。それらの経験をもとに、留学生の教育を通じて国際化についても貢献できるよう努力していきたいと考えています。
 防災情報に関しての知識や経験は浅い面もありますが、皆様のお力を拝借しながら教育研究活動を行っていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。