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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第33号(2016.09.01)

特集:関東・東北豪雨から1年

常総市の初動対応の分析

 2011年東日本大震災、2016年熊本地震など、過去の災害における行政対応の検証では、「全体像が把握できない」「不適切な人材配置による一部の職員への負担が集中した」「組織運営が非効率であった」などが頻度高く指摘される。
 それは我が国では災害対策本部の運営方法など効果的な初動対応を実現するための共通概念は存在せず、初動対応の成否は各自治体の創意工夫で成立している。これは市町村が第一次的な災害対応に責務があることもあるが、行政全体でどの業務に高い人員負荷が必要なのかなど、初動期における業務分析が十分に行われていないためである。その結果、「ハザード想定」や「被害想定」は定量的に行われているが、これに対する「対応想定」が定量的に行われていないことにつながる。
 対応想定を行うためには、災害対応業務のモデル化、被害に対する対応量の評価手法が必要となる。これを実施するためには、実災害における災害対応の全体像を分析し、行政職員の対応の業務量負荷分布を知る必要がある。しかし、業務日報など実災害における行政職員の対応が記録されていることはほとんどない。
 そこで本研究では、初動期における行政対応の業務負荷を把握するために、常総市職員の「残業記録」から業務の全体像を把握し、負荷の高い業務を分析する。残業記録は、常総市職員が災害対応に関わる残業時間と勤務内容を人事課に提出し、人事課では提出された全ての職員の残業記録を保管している。残業記録は、あくまで残業分のみなので、残業外の業務内容を把握することはできないが、残業内容は、残業外も同様の業務を実施したと仮定する。本稿では、9月分の残業記録を分析した結果をご紹介する。
 図1は、常総市職員の9月分の災害対応業務を示したものである。避難所運営にもっとも多くの職員が配置されていることがわかる。罹災証明書の発行については、避難所運営に比べると大幅に職員数は少ない。しかし、罹災証明書の発行など、被災者の生活再建に欠かせない手続きを迅速に行う必要があり、ここに人員配置を強化することが必要である。
 熊本地震における熊本市職員の配置状況を見ると、避難所運営にもっとも多くの職員が配置されている(図2)。罹災証明書の発行が大幅に遅れた理由のひとつは、職員配置のアンバランスもある。
 避難所運営に多くの行政職員を配置することは、他の業務が手薄になることになる。避難所運営は、地域で自主的に運営、またはボランティアを適切に活用する。行政職員は罹災証明書の早期発行など被災者の生活再建に不可欠な対応を優先的に実施する必要がある。避難所は行政職員ではなくても運営できるが、罹災証明書の発行は行政職員にしかできない。なお、ボランティアの適切な活用のために、行政職員は、効率的に避難所の状況把握をする仕組みを準備すればよい。
 常総市と熊本市の比較ではあるが、地震でも水害でも避難所運営など、行政対応の負荷が高い業務は共通していることが分かった。今後は、各ハザードによる行政対応の違いを比較していきたい。
  

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図1 常総市職員の9月分の災害対応業

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図2 熊本市職員の4月分の災害対応業務

沼田宗純