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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第33号(2016.09.01)

特集:関東・東北豪雨から1年

標準的な災害対応支援システムの整備・運用体制の構築

 平成27年台風第17号と第18号の2つの台風の影響により、9月9日から10日にかけて鬼怒川上流域では記録的な大雨が降り、鬼怒川下流部では10日6:00頃に越水、12時50分に三坂町で堤防が決壊した。被害が集中した常総市では、死者2人、負傷者44人の人的被害が発生し、全壊53軒、大規模半壊1,581軒、半壊3,491軒の住宅被害が発生した。また、市の発表する避難勧告や指示について、タイミングの遅れや範囲、避難先などについて課題が指摘された。
 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターでは、特定非営利活動法人CeMI環境防災研究所と共同で、この水害での常総市住民の避難行動と情報入手の実態明らかにするための調査を実施した。避難勧告・指示が発表された鬼怒川左岸住民を対象に平成28年4月1日~30日まで実施した。調査方法は郵送配布・郵送回収とし、郵便番号から地区を抽出し、鬼怒川左岸の地区の約半数の 6,512 票を配布した。回収率は 32.9%(2,144/6,512)であった。ここでは、その結果を簡単に紹介する。
 第一に、避難行動について概観する。
 浸水しなかったという人は27.7%であり、7割以上が何らかの形で浸水被害を受けている。また、浸水の程度によって避難率は上がっていた。避難先は常総市内が45.3%、市外が49.8%、指定避難所が40.9%、家族・親戚の家が48.8%であった。また、80.7%が自力避難し、75.8%が自動車で避難した。この被害では、ヘリコプターにより1399人、地上部隊により2919人が救助され、報道では、その逃げ遅れに対する指摘が目立ったものの実際は多くの人が自力で避難していたのである。避難途中の状況としても、「冠水して足元がわからなかった」(18.7%)、「水深が深くて、移動が難しかった」(14.9%)という人は少なく、「危険はなかった」という人が51.6%であった。
 避難した理由としては、「近くで浸水していたから」(21.4%)、「鬼怒川が決壊したから」(14.5%)という状況の認識、「「避難勧告」「避難指示」が発表されていたから」(19.0%)、「避難を呼びかけられたから」(14.3%)という避難に関する情報が理由としてあげられていた。だが、全体として住民多くに共通する特段の理由があるというわけではなかった。
 第二に、情報と危機感について概観する。
  まずは気象情報(注意報・警報、降水量など)である。今回の災害は台風を契機とするものであり、9日の段階から注意の呼びかけが行われ始め、10日0時20分には栃木県への大雨特別警報、7時45分には茨城県に大雨特別警報など注意報・警報、降水量などの情報が提供された。だが、約半数以上がこれらの情報を受け取っているものの、危機感を持った人は少なかった。茨城県の大雨特別警報についても69.9%が入手したものの24.7%しか危機感を感じていなかった。
 河川情報についてはどうか。「はん濫危険情報」は、入手した人は36.7%であり、危機感を感じた人も少ない。一方、ほぼそれと同意の「増水して氾濫しそうだという情報」は多くの人が入手したと答えており、それによって感じる危機感も高い。すなわち、はん濫危険情報は、住民に対しては、意味がよく理解されてなく、危機感を伝える情報として十分に機能しているとはいいがたいことがわかる。「はん濫発生情報」については入手し、危機感を感じたという人は32.0%、ほぼ同意の「既に氾濫しているという情報」は入手し、危機感を感じたという人が38.0%と、こちらの方がやや高い。はん濫発生情報についてもほぼ同じ問題を抱えているといえる。
  これらの情報の中でもっとも大きな意味をもっていたのは「上三坂の堤防決壊の情報」であり、70.5%の人が入手し、45.0%の人が危機感を感じていた。次に大きな意味をもっていたのは、「避難勧告・避難指示」で66.3%が入手し、40.1%の人が危機感を感じていた。
 すなわち、堤防決壊という状況と避難勧告・避難指示が危機感を感じさせるのに大きな影響をもっており、大雨特別警報を含めた気象情報、河川情報はそれらと比べて、危機感を与えるには十分な役割を果たしていなかったことがわかる。
 また、全体として「無回答」が多く、どの項目でも2割程度を占める(他の質問項目では無回答は多くはない)。これは、様々な河川に関連する情報が多く出されているものの、情報の弁別、認識できていない人が2割程度いることを示している。
 河川情報に限らず観測技術、情報伝達技術の発展に伴い、様々な災害情報が提供されるようになった。ただし、それが住民に危機感を与えるのに十分に役に立っているとは言いがたい状況が生まれている。人々の避難行動を促すための情報という観点からは、情報提供の方策の改善や理解度向上などの対策が必要であることを示している。

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図 情報の入手と危機感(N=2144)

関谷直也