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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第32号(2016.06.01)

CIRIR Report

2つの避難所運営ゲーム(HUG)

 熊本地震発生後、熊本市内の避難所調査に参画した。その際、住民の手で避難所運営を行っているところ、子供達のボランティアが目立つところ、学校教職員の負担が大きく疲弊しているところなど、様々な様子がうかがえた。ある校長先生は、「子供達は手伝ってくれるが、大人は避難所に来れば誰かが何かしてくれると思っている。普段から大人への教育が必要だった」という話をされていた。
 北海道では今春、冬季の地震災害を念頭に置いた2種類の避難所運営ゲームが完成した。ひとつは避難所運営ゲーム北海道版(Doはぐ・ドゥはぐ)、もうひとつはHUG厚真町版である。
 避難所運営ゲーム(HUG・ハグ)は、2007年に静岡県によって開発された教材である。避難所の図面に避難者に見立てたカードを配置したり、避難所で起こる様々な出来事にどのように対応するか考えたりする内容となっている。筆者は北海道HUG研究会のメンバーとして、この静岡県版HUGを踏まえて2012年より北海道で積雪期の避難所運営を考えるワークショップを展開してきた。
 そのような中、北海道が教材作成の予算を獲得し、避難所運営ゲーム北海道版を作成することとなった。北海道、札幌市、札幌管区気象台、北海道社会福祉協議会、北海道教育庁学校教育局、日本赤十字北海道看護大学根本教授に加え、北海道HUG研究会メンバーでもある北海道大学森准教授、筆者からなる検討委員会を組織し、4回の議論を経て、教材が完成した。
 北海道版HUGは、真冬に直下型地震が発生し、電気・ガス・水道が使えないという状況下で、災害後数時間から2日後までの避難所を舞台としている。避難者の性別・年齢・居住地・自宅の損壊状況、家族構成、本人や家族の事情が記された「避難者カード」、避難所内で対応する出来事が記された「イベントカード」、時間帯や気象、温度条件などが示された「情報提供カード」計250枚を使用し、避難所運営について考えるしかけである。その中には、インフルエンザ、低体温症、暖房器具の使用など、冬期に考えられる事態が盛り込まれている。
 この教材は、4月17日に札幌市内でお披露目会がなされた(写真1)。北海道大学の学生と医療従事者が実際にゲームに参加し、災害時における避難所運営を疑似体験した。今後、北海道が認定する防災マスター(防災リーダー)の研修をはじめ、全道での活用が期待されている。
 一方、HUG厚真町版は、筆者が防災アドバイザーを務める厚真町において、作成したものである。ニュースレター30号で作成中だったものが、この春完成した。厚真町における北海道防災マスターや教員、地域起こし協力隊や町職員などからなる検討委員を中心に、検討会や試行会を重ねてきたものである。HUG厚真町版は、200枚の避難者カード・イベントカードを使用するが、避難者名を町の特産物や旧地名にするなど、厚真町にゆかりのある名称を用いた。また、避難者の中には配慮すべき人以外に、活躍できる人もいる。障がいの有無や職業経験、地域での役職などの情報については、個人が特定されないような工夫をしつつリアリティを追求した。
 HUG厚真町版は4月に完成し、5月下旬より町内で研修を開始する。まずは、町内の北海道防災マスター向けの研修を行い、その後、防災マスターと共に町内の学校や団体で研修を行う予定である。
 熊本地震で避難所運営の課題が改めて浮き彫りになった今、どちらの教材も、冬の地震災害を念頭に置いた地域性豊かな教材として、今後の活用が望まれる。

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図1 厚真町版HUG

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写真1 北海道版HUGお披露目会の様子

定池祐季