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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第32号(2016.06.01)

特集:熊本地震

標準的な災害対応支援システムの整備・運用体制の構築

 我が国には、標準的な災害対応支援システムの研究・開発・実装・管理・更新する体制が必要である。現状は、災害発生後の混乱した状況の中で、各市町村は、避難所情報システムや罹災証明書の管理システムなど、どのようなシステムが必要なのかを「選択」し、これを使うために「訓練」し、現場に「実装」するプロセスを行っている。そのため各種の情報システムが存在している中で、どのシステムが適しているのか、機能の違いは何か、使い勝手はどうかなど、十分に検討する時間も知識もないままに「選択」を求められる。自然災害という対戦相手が既に立ち向かってきている状況にありながら、戦う武器を選択していては、勝利は遠い。
 しかも、行政職員は、初動対応で目の前の課題をこなすことに精一杯であるため、自らの業務や組織全体の業務を効率化できるようなシステムを選択する思考は乏しく、民間企業が社会貢献や善意で提供してくれたシステムで“良さそうなもの”を選択せざるを得ない。このとき、すでに行政職員が現場での対応方法を工夫し、業務のやり方が固まっている状況なので、新たに情報システムを導入し、対応方法の変更を求めることは容易なことではない。
 大規模災害では、全体の状況把握が必要になるが、各種のシステムの「選択」「訓練」「実装」は各市町村の判断に委ねられている。従って、全ての避難所の状況把握においても市町村間で異なる避難所情報システムが導入されていれば、全体の状況把握はできない。
 そもそも災害対策基本法第40条と第42条の規定は、発災直後から住民の生活支援などの全ての対応を単一の自治体で自己完結的することを前提とした災害対応の自己完結型の思想である。そのため国であっても避難者情報を収集する標準的なシステムを開発はしておらず、各市町村の意思決定にゆだねているため、各市町村でその武器の整備状況に差がある。自治体間で事前の準備状況に格差がある状況では大規模災害に対しは被災地全体で最適化できる状況ではない。この点、自己完結型の思想から脱却し共同運用型の体制を備え大規模災害に対応する必要があり、標準的な災害対応支援システムを戦略的に整備する必要がある。
 益城町の災害対策本部では、各避難所など現場の状況をLINEを使って管理していたが、物資のニーズ、各種要望などが羅列されたグループも複数あり、どの対応が完了したのか、未対応なのかなどのToDoの整理すらできなかった。そもそもLINEは、災害対策本部にいた職員が普段使っているコミュニケーションツールとして使い慣れているだけであって、災害対応業務全体の進捗管理には限界があったが、一旦組織全体が動き始めると、その方法を変更することは容易なことではなかった。
 発災前から標準的な災害対応支援システムが「選択」され、発災直後からこれを使用する組織体制であれば、非効率な情報収集・整理には至らなかった。
 また、益城町に限らず多くの自治体には、被災地外から多くの応援職員が発災直後から駆けつけた。応援自治体の有効活用においても、使用するシステムが標準化されていれば、応援自治体と被応援自治体でスムーズな連携ができた。
 筆者らの研究グループでは、マイナンバー“も”使える避難所情報共有システムCOCOA(ココアと呼ぶ)を開発し、石巻市の総合避難訓練や東京大学生産技術研究所の防災訓練で活用している。全国14万箇所以上の避難施設がデータベース化されているので、いつでも、どこでも、どこからでも、どのような災害があっても、避難所別の避難者数などの情報を一元的にリアルタイムに収集・分析・可視化できる。可視化される情報は、行政の境界を超えた被災地全体の状況として表示されるため、都道府県や国とも情報共有でき、被災地全体の最適化につながる。
 災害対応支援システムは、共同運用型として複数の自治体で共有し、維持費の削減、知見の集約、最新版の常時アップデートにより、いつでも、どこでも、どこからでも、その時点で最新の標準的な災害対応支援システムを利用できる体制が必要である。

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益城町災害対策本部の様子

沼田宗純