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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第32号(2016.06.01)

特集:熊本地震

熊本地震と震度7

 2016年熊本地震では、4月14日のM6.5の地震において、熊本県益城町(ましきまち)で震度7の揺れが観測された。地震発生直後から多くの報道がなされ、記憶されている方も多いだろう。震度7が観測されたのは、2011年東北地方太平洋沖地震以来、5年ぶりのことであった。被害の報道が相次ぐ中、4月16日により規模の大きなM7.3の地震が発生した。地震活動は熊本県にとどまらず、阿蘇山や大分県の別府に至る地域で活発となった。M7.3の地震直後の気象庁報道発表資料(第7報)では、最大震度が6強と報告されている。しかし、益城町の震度は掲載されていなかった。甚大な被害の全容が明らかになりかけた4月20日、気象庁報道発表資料(第22報)において、熊本県益城町と熊本県西原村で震度7が観測されていたことが分かった。その結果、熊本地震は同じ場所で震度7が二度観測された初めての地震であり、かつ複数地点で震度7が観測された初めての地震となった。これは、1995年兵庫県南部地震を契機に、体感や被害状況に基づいていた震度を、観測記録から同一の算定式で瞬時に計算する計測震度に移行してから初めてのことである。このような地震において震度7を観測し、被害を解明する一助となり、災害軽減に資するために、観測機器が全国に配備されていると言っても過言ではないだろう。
 研究者に衝撃を与えたのは、熊本地震の震度7の観測波形の威力であった。日本で観測されたことのない、最大速度が250 cm/sに達する西原村震度計の波形や、これまで驚異的な地震動として参照されてきた兵庫県南部地震の鷹取波に匹敵する、破壊力を有する益城町震度計の波形は、地震工学分野に重い課題を与えた。
 また、左の写真の益城町のように、被害地域において震度が観測された事例がある一方、右の写真のように、被害が生じていても、最寄りの震度計までの距離が遠く、震度観測の空白域となっている地域も存在する。震度という災害情報を迅速に入手伝達するためには、多大なコストがかかるが、その重要性を訴え続けると共に、震度情報が入電していない地域の迅速な震度予測、震度観測の空白域の震度予測を考えていく必要がある。大半の機関では、震度を基準とした緊急体制が敷かれており、もはや震度は災害時には欠かせないインフラストラクチャーとなっている。
 熊本県では、明治時代1889年にM6.3の熊本地震が発生しているが、最近約90年間に震度5を上回る揺れは観測されていなかったようである。そのような状況にあっても、事前に2016年熊本地震に関連した日奈久断層帯や布田川断層帯が調査され、地震ハザードマップが作成されてきた。しかし、地震以外の自然災害の頻度が高い地域の住民に、これらの情報が届いていたかどうかは検討の余地がありそうである。低頻度大規模災害に対し、備える難しさを感じている。

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熊本県益城町寺迫

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熊本県南阿蘇村河陽(黒川地区)

三宅弘恵