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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第31号(2016.03.01)

CIRIR Report

CIRIR定期調査にみる東日本大震災

 東日本大震災は、被災地に甚大な被害、長期の避難生活を強いているが、同時に被災地域を超えて広く、我々の社会性のあり方から防災・減災対策のあり方まで広範囲に影響を与えた可能性がある。そのひとつとして、東日本大震災が市民意識にどのような影響を与え、そして与え続けているのか、CIDIRが2009年から年に1回実施してきた定期調査に基づいて関連する結果を紹介する。
 景気や年金・社会保障、健康など日常生活の中で感じる不安対象と比較すると、図1に示したように健康が7年間ほぼ同じ割合であることと比べると、原子力事故への不安は急激に変化している。また、自然災害の中で地震、津波、河川氾濫について図示したが、2011年に紀伊半島水害が、2015年に関東・東北豪雨が発生した河川氾濫の推移と合わせると、津波への不安は急激に高まったし、高い水準で維持されているといってよいだろう。

 ところが、耐震化や家具の固定の実施率は伸びていない。2010年度を100とした指標でみると、耐震化実施率は2011年度に101.6、2015年度に104.9、家具の固定はそれぞれ109.8、111.3となっており、食料や水の備蓄が132.1、142.5と比べて変化は少ない。新耐震基準以降で耐震化不要という人を除いても、2015年度の対策実施率は25.9%にとどまっている。耐震化を実施しておかなければ津波避難自体ができない。
 津波不安と耐震化とがうまく結びついていない可能性もあるが、図2 に示したように、「人間がどんなに対策をとっても自然災害による被害は防ぎようがない」という災害観に同意する率は2011年度よりも2012年度および2015年度の方が有意に高くなっている。災害観の測定は綿密な尺度構成が求められるので、一つの項目だけを取り出して議論をすることは危険であるが、この結果は対策の有効性への懐疑が対策実施を抑制している可能性も示唆する。包括的な調査が求められる推移と考えている。

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図1 不安の程度の時系列変化

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図2 「自然災害による被害」は防ぎようがない

田中淳