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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第31号(2016.03.01)

特集:東日本大震災5年

東北地方太平洋沖地震から5年を経て

1.はじめに

東北地方太平洋沖地震からもうすぐ5年になる。この地震が引き起こした東日本大震災の影響は未だに続き、特に福島県の復興には、多くの課題の解決と時間をかけた取り組みが必要である。この大震災からの復興を、国全体の問題として真摯に取り組むことが、被災地はもちろん、将来確実に発生する首都直下地震や南海トラフの巨大地震などの被害軽減のために重要だ。この震災以来、私は、従来の細分化が進んだ特定の学問分野や少数の関連分野の連携だけでは解決できない問題が多いことを痛感するとともに、防災研究者として、自然の驚異と研究者が忘れてはいけない自然に対する敬意や謙虚な姿勢の重要性を再認識している。

2.東日本大震災と研究連携の重要性

 上記の私の問題意識と同様な認識に基づき、平成27年1月9日に「防災学術連携体(代表幹事:和田章(日本学術会議会員))」が発足した。規約によれば、その設立目的は、「日本および世界の自然災害に対する防災減災を進め、より良い災害復興をめざすために、日本学術会議と連携して、防災(防災減災・災害復興を含めて「防災」とよぶ)に関わる学会が集まり、平常時から相互理解と連携を図ると共に、緊急事態時に学会間の緊密な連絡がとれるよう備える。平常時から政府・自治体・関係機関等との連携を図り、防災に役立てると共に、緊急事態時に円滑な協力関係が結べるように備える。学術連携を図ることで、より総合的な視点をもった防災研究の発展をめざす。」となっている。
 「防災学術連携体」のメンバーは、1月末時点で48学会である。この中には、地球惑星科学連合(50学会)と横断型基幹科学技術研究団体連合(37学会)も含まれ、これらの連合に加盟する学会を合わせると、重複加盟を除いて120学会をカバーする組織になっている。具体的な活動を含め、「防災学術連携体」の詳しい情報は、WEBサイト(http://janet-dr.com/index.html)を参照されたい。
 なお、「防災学術連携体」の前身としては、日本学術会議の土木工学・建築学委員会が幹事役となって、平成23年に設立した「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会」がある。これは災害関連の30学会による学際連携組織であり、2011年~2015年の間に、10回の学術フォーラム(シンポジウム)を実施した。毎回、単独の学会では解決が難しいテーマを取り上げ、関連性の高い研究分野の4,5学会を幹事学会とし、それらの学会を中心として総合的な議論を行った。毎回、日本学術会議1階の講堂が満員になる状況であった(これについても上記のサイトから情報が入手できる)。

3.防災対策を継続的に実施する環境整備のために

ここまでは研究的な課題の話をしたが、言うまでもなく研究だけでは将来の被害は減らない。効率的な防災対策を具体的に実施していく環境整備が重要だ。しかもその整備に際しては、現在の我が国の財政状況や少子高齢人口減少を考えれば、首都直下地震や南海トラフの巨大地震による災害への取り組みが「貧乏になっていく中での総力戦」であることの認識が不可欠である。さらにこれらの巨大地震災害に対しては事後対応のみによる復旧・復興が難しいことから、人口誘導など、発災までの時間を有効活用したリスク軽減対策が欠かせない。また「自助・共助・公助」の中で、今後は益々不足する「公助」を補う「自助」と「共助」の確保とその継続がポイントになる。これらを実現する上では、様々な関連分野を融合した研究成果に基づくハードとソフトの組み合わせ、さらに産官学に金融とマスコミを合わせた総合的な災害マネジメント対策が求められる。
 私は、これらを実現する上でのキーワードは、防災対策の「コストからバリュウへ」の意識改革と「フェーズフリー」であると考えている。従来の「一回やれば終わり、継続性がない、効果は災害が起こらないとわからない」というコスト型から、「災害の有無にかかわらず、平時から組織や地域に価値やブランド力をもたらし、これが継続される」バリュウ(価値)型の防災対策へのシフトが重要だ。「フェーズフリー」は平時と災害時、事前から事後までの7つの対策の様々なフェーズに適用できたり、利用可能な商品、システム、会社や組織、人やその生き方、などを表現する新しい言葉である。社会の様々な構成要素を「フェーズフリー」にしていくことで付加価値をもたらすとともに、結果的に社会全体を「フェーズフリー」に、すなわち災害レジリエンスの高い社会に変革していくことが重要である。

目黒 公郎