newsletter36号テキスト4

東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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CIDIR Report

東日本大震災の経験はどう影響したか

 1.2016年11月22日福島県沖地震津波
 11月22日5時59分に発生したマグニチュード7.4の福島県沖の地震により、福島県や栃木県、茨城県の一部で震度5弱の揺れに見舞われた。この地震により、6時02分に福島県に津波警報(3m)が発表され、またこの津波警報(3m)は8時09分には宮城県に拡大された。この地震にともなって、仙台市で最大144cmの津波が観測されたほか、福島県で83cm、津波注意報だった岩手県で79cm、茨城県で49cm、北海道太平洋沿岸中で32cmなど広範囲にわたり津波が観測された。
 今回の対象地は東北地方太平洋沖地震時に津波の被害を経験しており、その体験は一般的には避難を促進させるが、「経験の逆機能」と呼ばれる、条件の違いから体験が避難の抑止につながった過去の事例も見られる。東北地方太平洋沖地震では震度6弱の強い揺れに見舞われたが、今回は震度4から震度5弱に留まっていた。そこで、福島県いわき市と南相馬市の協力の下、津波避難の実態調査を行った。
 回収率は、いわき市が配布数1,443票、有効回答数524票で有効回収率は36.3%、南相馬市が配布数1,065票、有効回答数342票で有効回収率は32.1%だった。

2.津波対応行動
  避難率は、家族全員が避難した人はいわき市で68.1%、南相馬市で31.0%、家族の一部が避難した人はいわき市で6.1%、南相馬市で9.9%だった。つまり、いわき市の方が避難率は高かったことになる。
 その背景として、揺れを感じて「自宅に被害が出るような大きな津波が来るかもしれない」と思った人はいわき市が21.4%、南相馬市が12.3%と多くはないが、街に被害が出るほどではないが津波が来ると思った人は、いわき市が44.5%、南相馬市が44.7%に達している。また、避難を考えたかをみると、いわき市で54.0%が強く、25.8%が少し思ったと回答している。これに対して、南相馬市では避難しようと強く思った人は21.5%に留まり、少し思った人が37.4%となっている。
 一見すると、いわき市の方が津波に敏感であるよう受け止められる結果となっている。しかし、津波ハザードマップで津波により浸水する予測となっていると回答した人は、いわき市で63.4%、南相馬市で30.7%となっている。「わからない」とした人が2割前後いるが、いわき市の方が浸水予測の比率が高い。また、東北地方太平洋沖地震時に津波から車または徒歩で避難した人は、いわき市で53.9%、南相馬市で39.8%と、やはりいわき市で多くなっている。南相馬市の方が、沿岸から離れた地域の回答者が多かった可能性が高い。
 むしろ、注視すべき結果は、今回の地震の揺れが収まった後に、「すぐに避難を始めた」人はいわき市で36.6%、南相馬市で19.0%と、最終的に避難した人の半分以上を占めており、しかも国土交通省の東北地方太平洋沖地震時の津波避難調査によると、揺れが収まってから「何もせずすぐに避難した」人はいわき市で20.6%、南相馬市で12.7%であった。図1に示したように、すぐに逃げられるように避難の準備を始めた人も多く、揺れを避難の契機にした比率が高まっていることがわかる。
 その一方で、避難しなかった人にその理由を聞くと、「揺れが小さかった」と回答した人は、いわき市で31.3%、南相馬市で29.7%となっており、揺れが小さかったものの高い津波が襲来した明治三陸地震津波タイプへの対応には、懸念を残す結果となっている。 

(田中 淳)

3.png図1:地点別に見た調査協力者の被害状況4.png図2:復興は(A)迅速さと(B)慎重さどちらを重視すべきか


(田中 淳)