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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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第31号(2016.03.01)

特集:東日本大震災5年

東北沖地震から5年経った地震と地殻の活動

 この3月11日で、2011年東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震と略す)から5年経つ。2015年末現在で全国の47都道府県で、約17万8千人が避難生活を続けている(復興庁)。地震直後の約34万4千人に比べれば減っているとはいえ、当初の半数以上の人がいまだに困難な生活を余儀なくされている。この意味で、東日本大震災はまだ終わっていない。一方、地震学的な意味でも、マグニチュード(M)9.0の超巨大地震の日本列島への直接的な影響はまだ続いている。小文ではこのことを思い出し、次の震災への備えを喚起したい。
 2011 年3月 11 日 14 時 46 分の本震発生後、おびただしい数の余震が発生した。余震活動は、現在でも東北地方太平洋沖を中心に続いている。本震発生直後にはM7.0を超える大きな地震が頻発し、3月11日に3回、4月に入って2回、7月に1回など次第に減少しつつも、2012年、2013年、2014年にそれぞれ1回と、現在までに計9回発生した。現時点で最大の余震は、本震約30分後に茨城県沖で発生したM7.6の余震である。沿岸に近いところで発生すれば有感になるM5.0 以上の余震数でみると、本震発生後の最初の1年間で666 回、1年後から2年後までの1年間では 84 回と着実に減ったが、それでも、2014年には30回、2015年には39回、今年になっても1月に1回、2月に2回発生している。
 余震がいつまで続くかを正確に予測することは難しいが、東北沖地震の余震が数年で終わることはなく、長期間にわたって継続する。例えば、東北沖地震と同じような巨大地震である2004年12月のスマトラ島北部西方沖地震(M9.1)では、その発生7年半後の2012年4月に、M8.6の地震がスマトラ島の西方で発生した。この地震が2004年の地震の余震か、それに誘発された地震かは研究者によって見解は異なるが、超巨大地震の影響を受けて発生したことは間違いない。東北地方の太平洋沖でも、M8を超える巨大地震が東北沖地震の余震域、その沖合側、北側あるいは南側の隣接部で発生する可能性は、今でもあると考えるべきである。再び大きな津波が沿岸を襲う可能性がある。
 地震後の地殻変動も続いている。東北沖地震の発生にともなって日本列島は大きく東向きに移動した。国土地理院によれば、本震時に宮城県石巻市の牡鹿半島は東に5.3m動き、1.2m沈降した。地震時のプレート境界での破壊はおおよそ3分で終了したが、地殻変動はその後も継続した。三陸海岸では、地震後1週間で東に20㎝を超える大きな移動が観測された。その後5年経った今でも東へ移動し続け、2015年末には牡鹿半島の地震後の東への累積変動は1mを超えた。例えば、岩手県の太平洋沿岸にある山田町は、東北沖地震の前は2~3㎜/年の速さで西に動いていたが、地震時に2m東へ、地震後も東進し続け、現在でも1㎝弱/年の速さで東に向かっている(動きはすべて、長崎県福江に対するもの)。地震後の地殻変動は、地震前の日本列島の定常的な動きよりはるかに大きいのである。これは、東北地方の陸地の動きであるが、震源直上の太平洋沖の海底では、陸上に比べてはるかに大きく地震時に変動し、地震後の動きも顕著である。海上保安庁や東北大学の観測によると、地震時には数十mの水平変動が観測され、海洋研究開発機構の精密海底地形調査によれば、日本海溝軸の直近では50mにおよぶ地震時水平変動が生じた。地震後の海底の動きは複雑で、陸上と同様に東向きに運動している場所と、しばらくして逆に西向きに動き始めたところがある。こうした地殻変動は、断層面の余効的滑りと地殻・マントルの粘弾性緩和による変動の両方の効果が重なったものである。
 余震活動と余効的地殻変動の継続は、M9.0という超巨大な地震の日本列島への影響が5年経ったいまでも続いている明白な証拠である。この効果は、東北地方にとどまらず、関東を含めた日本列島全体に及んでいる。現在の地震学では、周辺への影響の全体像を定量的に評価することができないが、地震活動の活発化と、逆にある地域では静穏化などをもたらしていることは確かである。日本列島は、超巨大地震の発生で不安定になり、現在もその状態が続いている。これは、次の巨大地震に備える必要性と、どのように備えるかを考えるうえで、忘れてはならない事実である。

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図1 不安の程度の時系列変化

(2011年3月1日〜2016年1月31日、深さ全て、M≧4.0)2011年からの地震を薄く、2015年の地震を濃く、20161月の地震を赤く表示。領域a内のM7.0以上の地震と2016年1月に発生したM5.0以上の地震に吹き出しをつけた。

出典:気象庁ホームページ

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東京大学地震研究所教授 平田直