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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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特集:企業の危機管理

『大規模災害時の企業の災害対策とBCP』結果報告

 災害ハザード情報や被害想定など災害についての予測情報は、科学的不確実性を伴いつつも、政府や自治体、企業や団体、また住民がその災害被害について見当をつけ、減災に活かされることを目的に据え提供されている。だが社会機能維持を担う主たるセクターである企業が災害ハザード情報や被害想定などの情報をどう受け止め、活用しようとしているか、災害対策でどのようなことがボトルネックになっているのかについての分析は少ない。
 そこで、我々センターでは、科学的不確実性を伴う災害ハザード情報に焦点をあてて、アンケート調査を実施した。本調査では、大企業に焦点を当て、日本に拠点を置く外資系企業約1000社及び国内上場企業約1700社を調査対象として、3月4日(水)~18日(水)を調査期間として行った。結果、外資系企業155社、国内上場企業114社から調査回答を得た(回収率 9.1%)。全般的に外資系企業の方が内資系の企業よりも防災への意識は低かった。以下、結果の概略を示す。

■災害想定に対する考え方:企業に災害対応、BCPを考えるにあたり参考としている災害の想定について問うた。結果、最も回答数が多かったのが「首都直下地震の被害想定」(外資 66.7%:内資 82.6%)で、次いで「南海トラフ地震の被害想定」(外資 53.5%:内資 80.6%)であった。3位以下は、「都道府県の地域防災計画での想定」(外資 61.4%:内資 80.0%)、「市町村の地域防災計画での想定」(外資 50.9%:内資 71.6%)、「首都圏大規模水害の被害想定」(外資 38.6%:内資 51.6%)、「全国地震動予測地図」(外資 29.8%:内資 51.0%)、「富士山噴火の被害想定」(外資 25.4%:内資 36.1%)「日本海津波の「浸水」想定」(外資 21.9%:内資 35.5%)と続く。火山、日本海側の津波はあまり関心がないようである。
 次に、政府や自治体の想定をどのように捉えているかを聞いたところ、「災害について、あらゆる科学的な想定には限界があるので、参考程度に考えている」(外資 60.5%:内資 58.1%)、「政府・自治体の災害想定はあくまで想定なので、参考程度に考えている」(外資 59.6%:内資 56.8%)、「対策のとれるところから対策をとっているので特に想定を厳密に考えたことはない」(外資 49.1%:内資 36.8%)と、災害想定を必ずしも、厳密に捉えているわけではないことがわかった。
 とはいえ、「(逆転項目)政府・自治体の災害想定を参考にしたことはない」(外資 14.9%:内資 8.4%)、「(逆転項目)政府・自治体の災害想定を知らない」(外資 14.0%:内資 7.7%)という項目について回答率は低い。すなわち、多くの企業が政府・自治体の災害想定を参考にしていることがわかった。また「もっと詳細な災害想定を知りたい」(外資 59.6%:内資 58.1%)と、より詳細な情報への要望も強い。「政府・自治体の災害想定を新規の事業所立地や事業計画の参考にすることがある」(外資 43.9%:内資 65.8%)と、事業活動の参考にもされていた。
 ただ、自由回答では、「想定外を恐れるあまり、想定がだんだん大きくなっているように感じる」「想定値が『最大値』を取りすぎて余りにも防災対策を考えるには現実味の無い」「さまざまな想定情報が出てきており、この情報をうまく活用できなく困っている」「むずかしい」「相定が色々とあってわかりづらい」といった回答が多くあげられており、解釈や活用方法に疑問を抱いている企業も少なくなかった。これは今後の課題であろう。

■企業の災害対策促進上の課題:企業は災害対策を促進するにあたって、政府や自治体の被害想定よりもその先のインフラ被害やサプライチェーンのリスク要因の想定で苦しんでいるようである。これは「交通、電力、通信、水道、ガスなどのインフラ被害状況の想定が難しく、苦慮している」(外資 45.6%:内資 45.8%)、「災害発生時のサプライチェーン、取引先のリスク要因の想定が難しい」(外資 38.6%:内資 49.7 %)などの回答に現れている。

■災害対策を進める上での要望:災害の担当者が対策を進める上での要望としては、「同業他社の災害対策・BCPの取り組みを知りたい」(外資 52.6%:内資 75.5%)、「基本的な災害対策についてのノウハウ、勉強の機会があれば従業員の誰かを参加させたい」(外資 50.0%:内資 47.1%)と他社の動向や知識を欲しがっていた。
ただ、「災害対策においては、同じ業種・同じ業態で共同して進めるべきだと思う」(外資 22.8%:内資 40.6%)と、同じ業種・同じ業態で共同して対策をすすめるという項目について同意する企業は少なかった。あくまで企業の防災対策は、それぞれの企業がそれぞれの事情に応じて策定すべきという考え方のようである。
 また、それぞれの企業が災害対策の前提とする被害状況など災害ハザード情報については「災害時の被害の状況をさまざまな組織で共有する仕組みをつくるべきだ」(外資 34.2%:内資 56.1%)と、共同で情報を共有すべきところは共有すべきと考えているようである。政府への要望としても、「災害時の人的被害の状況、また復旧見込みをいち早く知りたい」(外資 71.1%:内資 76.8%)、「災害時の火災の状況をいち早く知りたい」(外資 56.1%:内資 65.8%)、「災害時の公共交通の状況、復旧見込みをいち早く知りたい」(外資 95.6%:内資 92.3%)、「災害時の幹線道路の被害の状況、復旧見込みをいち早く知りたい」(外資 70.2%:内資 85.8%)、「災害時の通信(疎通)の状況、復旧見込みをいち早く知りたい」(外資 78.9%:内資 78.1%)と、被害情報提供については要望が強かった。



                        (関谷 直也)