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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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特集:火山情報

噴火警戒レベル―ファジーな領域の活用を

 噴火警戒レベルは、常時観測火山のうち平成25年7月現在で30火山に導入されている。このうち、8月の時点でみると、レベル5(避難)が口永良部に、レベル3(入山規制)が箱根山と桜島の2火山に、レベル2(火口周辺規制)が雌阿寒岳から諏訪瀬島までの8火山に発表されており、残りの20火山がレベル1(活火山であることに留意)である。

 レベル5が発表されている口永良部は、2015年5月29日09時59分頃、爆発的噴火が発生し、火砕流が海岸まで流下したことは記憶に新しい。気象庁は、同日10時07分に噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引上げた。噴火警戒レベル導入後初めて居住地を対象とした噴火警報が発表された噴火現象であった。

 他方、レベル2が発表されている御嶽山では、2014年9月27日11時52分頃に噴火した。観光シーズンの週末、しかも昼という年間を通しても最悪の条件下で噴火したこともあり、死者58名、行方不明者5名、負傷者69名という甚大な人的被害が発生してしまった。

 これらの事例は、火山噴火の予測の難しさを示すものであるが、噴火警戒レベルの運用に限っても、御嶽山の噴火ではレベル2にあげることはできなかったのか、レベル1(平常)という表現が不適当だったのではないか、口永良部の噴火では、レベル4に引き上げるべきだったのではないか、解除の基準をどのように設定すべきかなど、いろいろな意見が出されている。

 この噴火警戒レベルは、それまでのレベル5「極めて大規模な噴火活動等」からレベル0「長期間火山の活動の兆候がない」までの火山活動度レベルに代わって平成19年から導入された。噴火現象の規模で区分するのではなく、影響範囲ととるべき防災行動とを指標とした災害情報に変更されたことになる。噴火現象の多様性や規模の範囲が大きいこと、個々の火山噴火履歴が必ずしもわかっている訳ではないことなどから、情報としては不確実性が極めて高い。段階的にレベルを上げることができずにスキップしたり、そもそも発表が間に合わなかったりする状況もありうる。そのため噴火警戒レベルの導入時から、不確実性を前提に制度の妥当性や利用方策が検討された。

 そのひとつとして、噴火警戒レベルという災害情報と避難計画等防災対策の具体化の推進を図る火山防災協議会等の活用母体とを、車の両輪に置いた。防災対策を具体化・進展させる場として、また人材育成の場として火山防災協議会等を位置づけた。だからこそ、火山防災協議会等で火山活動の状況に応じた避難計画やとるべき防災対応とその範囲が定められていることが噴火警戒レベルの導入条件となっているのであり、すべてに自動的に導入されているわけではない。

 災害情報の側についても改善の余地はあると考えている。第1に、ファジーな領域を残して、その活用を図る必要があると思う。火山噴火の予測には、他の災害予測と同様に不確実性が存在する。火山噴火現象のダイナミックレンジの広さや現象・進展の多様さからみると、その不確実性は自然現象の中でも最も高いグループに入るかもしれない。それだけに、その不確実性を吸収するバッファとしてレベル2とレベル4の発表基準や対策については、ファジーな部分を残しておく方が良い。災害情報は安全サイドに発表することが大前提だが、それに伴う防災対応が重たくなればなるほど判断が難しくなることも事実である。入山規制や居住者の避難という社会的・経済的影響が極めて大きなレベルの前段階として、より安全サイドに発表できる領域を残すことで若干の改善は可能であろう。

 第2に、このファジーな領域を残すとすると、そこでは判断だけではなく火山の状況に関する情報を伝えていくことになる。そのひとつとしては、もちろん観測データを提供していくことになる。ただ、その際、データへのアクセシビリティは重要である。現実的には緊迫感が低い段階でチェックに行くことは容易ではない。登山届と同時にアクセスできるようになるなど、タイミングをとらえる仕組みが必要である。もうひとつに、対策実施状況などを積極的に示していくことも重要だと考えている。火山噴火に即して考えれば、平常時とは異なるフェーズに入ったことを示す、たとえば火山観測機動班を派遣した、住民説明会を開催する、避難場所の確認をしたなど、観測データ以外に提供できる情報はたくさんあり、その活用を進めることの有効性は高いと思う。


                        (田中 淳)