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東京大学 大学院情報学環 総合防災情報研究センター

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特集:火山情報

火山情報には「信頼」と「分かり易さ」が不可欠


  御嶽山の2014年噴火から間もなく1年、戦後最悪の犠牲者(死者・行方不明者63人)を出した火山災害であった。9月27日11時52分の水蒸気噴火に至るまでには様々な火山現象が確認されていた。8月下旬から山体直下の火山性地震が頻繁に観測されるようになり、9月10日には52回/日、11日には85回/日と、地震回数はピークに達していた。その後、地震活動は20回/日以下の小康状態が続くが、気象庁は9月11日から3度にわたって「火山の状況に関する解説情報」を出し、地元自治体には警戒を呼びかけていたという。

 9月16日に発表された気象庁の解説情報(第3号)では、「火山活動の状況」として「御嶽山では、9月10日、11日に剣ヶ峰山頂付近の火山性地震が50回を超え、地震回数の多い状態となっていました。12日以降はやや多い状態で推移しています。地震の振幅はいずれも小さく、火山性微動は発生していません。噴煙の状況および地殻変動に特段の変化は見られていません。」とし、日別の火山性地震回数等に続いて「防災上の警戒事項等」として「御嶽山では、2007年にごく小規模な噴火が発生した79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので、引き続き警戒してください。地震活動が活発になっていることから、火山活動の推移に注意してください。今後、火山活動の状況に変化があった場合には、随時お知らせします。」との情報文が出されている。

 9月12日に気象庁が発表した週間火山概況(平成26年No.37 平成26年9月5日~9月11日)でも、噴煙及び地殻変動の状況には特段の変化はなかったとの記載に続き「御嶽山では、2007年にごく小規模な噴火が発生した79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので、引き続き警戒してください」と注意を喚起している。ただし、週間火山概況は全国の火山が対象で「警報発表中」の草津白根山など10火山に続き、御嶽山は「噴火予報発表中」の火山としての発表であった。

 にもかかわらず、これほどの犠牲者を出したのは何故か、である。本来、火山性地震が50回を超えた9月10日時点で一旦「噴火警戒レベル2(火口周辺規制)」に引き上げられていたら、その後活動が小康状態になって警戒レベルが下がっても地元は一定の警戒態勢をとり、今回の悲劇は明らかに避けられた。2007年12月の「噴火警戒レベル」導入に道筋をつけたのが、2006年に内閣府が設置した「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」での議論である。この検討会において従来気象庁が発表していた「火山活動レベル」を自治体が住民に発する避難勧告など防災行動に直結できるよう「噴火警戒レベル」に改めるとの方針が出された。気象庁の発表する火山情報が住民避難などに直結できるという、大きな変換点であった。残念ながら、今回はこの噴火警戒レベルという新たな枠組みを適切に運用できなかったための悲劇であったことは、大いに反省すべきである。

 さらに、先に記した「火山の状況に関する解説情報」や「週間火山概況」の情報の扱いにも課題が含まれる。情報文の中に「79-7火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出の可能性がありますので、引き続き警戒してください」とある。まさに、今回の水蒸気噴火を予測していたかのような文面である。しかし、その真意が伝わっていたのか、大いに疑問が残る。「79-7火口」とはいったい何なのか、「火口内及びその近傍に影響する程度の火山灰等の噴出」とはどの程度の影響を想像すれば良いのか、情報文を読むだけでは私も判断できなかった。

 最近では、台風の接近や集中豪雨が予想される場合には、気象台が地元自治体や報道機関向けに説明会を開催するケースが増えてきた。私が所属していた静岡県では、地方気象台の予報官が県庁に出向き説明会を開催するのが常であった。その様子は県の出先機関だけでなく県内全市町村に映像で配信し、早めの警戒措置を促すことができた。何よりも、報道機関を含め関係者が警戒意識を共有できることに大きな意義がある。噴火警戒レベルが導入された火山には必ず地元の関係機関による火山防災協議会がセットされている。そこには専門機関としての気象台だけでなく地元の火山を知る大学や火山研究者も専門家としてその構成員となっている。少なくとも、火山活動などに何らかの変化が生じた場合には、これらの専門機関や専門家が直接説明することに大いに意義がある。

 火山活動は時として想像を絶する規模や形態に成長することがある。専門家といえども全てが分っている訳ではない。防災対応の判断を求められる自治体、そして、緊急避難など具体的な行動をとる必要のある住民や登山者に、いかに警戒感を持ち迅速に行動してもらうかは、情報発信機関への「信頼」と情報の「分かり易さ」にかかってくる。特に緊急を要する情報体系はなるべく「シンプル」に、が肝要である。そして、情報は分かり易く、もし伝わらないのであれば直接解説を行うのも一つの手段である。それにより、情報発信者である専門家と受信者である行政や住民との信頼関係は自ずと生まれてくる。


(静岡大学防災総合センター 岩田孝仁)